9月27日

 7時過ぎに目を覚ます。飲み残して冷やしたぶんがあるのと、そもそも豆が残り少ないのとで、コーヒーを少しだけ淹れる。そろそろ仕事が立て込んできそうだから、参考文献はそろそろ終わりにしなければと、少し気合いを入れて作業を進める。単にリストを作るだけだと読み物性がないよなと思っていたのと、古書目録に刺激を受けたのとで、いくつか解説があったほうがよさそうなものや、内容も手短に紹介したいものにはコメントもつける。そんな作業を始めてしまったせいで、また余計に時間がかかってしまう。校閲の作業で必要になるだろうなと、「この資料のこんな記述をもとに書いてますよ」とわかるように、それぞれ写メも撮り、さらに時間がかかる。それでもお昼頃にはあらかた片付き、セブンイレブンで買ってきた純連の味噌ラーメンでお昼ごはん。朝起きてTwitterを眺めていたとき、「ラーメン評論家」からの流れかラーメンを食べ続けて病気になった人の話がつぶやかれていたのを思い出し、汁はちょっとだけ残した。

 午後は日記を書いて、構成仕事に少しだけ手をつける。17時過ぎに家を出て、池袋へ。西武のデパ地下に立ち寄る。酒売り場をのぞくもやはり墨廼江はなく(ちょっとだけ足をのばせば宮城のアンテナショップがあるけれど、その時間はなさそうだ)、トスカーナのワインを探す。今日はお祝いなので、何度も行ったことのあるフィレンツェのワインをと探したものの、これといったものが見当たらず、それならばとカルメネールという品種のものを探す。2013年、マームに同行して5月にフィレンツェに、6月にチリのサンディアゴに出かけた。サンティアゴの公演で初日があけたあと、劇場のロビーでワインが振る舞われていて、それがカルメネールという品種のワインで、びっくりするほどおいしかった。以来、おめでたいイメージがくっついている品種になっているのだけれど、このカルメネールのワインがあったので、買い求める。そこからぶらついていると、点心が4パックで1080円に大胆に値引きされているお店があったので、4パック選んで買い求める。

 外に出て、明治通りを南下する。書店が見えてきたところで、ああそうだ、新刊がどこに並んでいるか見ておこうと思い立ち、立ち寄る。2階に上がり、新刊台のまわりを探すと、「新刊話題書/ノンフィクション」という棚の下のほうに置かれている。おお、と思いつつ、それとは別に、新刊台以外の棚だとどこに並んでいるのかと探して歩く。「ノンフィクション」の棚にも、同じ島にある「文芸エッセイ」の棚にも並んでいなくて、「読書論」の島にだけ並んでいた。これまでの2冊もそうだけど、一部のお店ではかたくなにノンフィクションとして扱ってもらえず、ああはいはい、そうですよね、という気持ちで外に出る。まあでも、そう考えると、ここ数日で「今日の新入荷!」のように『東京の古本屋』のことを書いてくれる書店員の方がいるというのは、とてもありがたいことだなと改めて思う。

 明治通りを下り、閉店後の「古書往来座」をのぞくと、お店の音に低い台が設けられていて、枝豆や唐揚げ、みつぼでテイクアウトしてきた焼きとんが並んでいる。今日は敢行記念のプチ祝いを開いてもらえることになったのだ。ワインを買ってきたものの、それはオープナーが必要なタイプだったので、コンビニでビールを買ってきて、セトさん、ムトーさんと乾杯。セトさんはお酒を飲んでは本を手に取り、ああ、××さんも出てくるんだ!と漏らす。取材されると、古本屋って構えちゃうけど、はっちのは取材取材してないから、ぽろっと言った言葉がそのまま残るから、その感じがすごい記録できてるんだよね、と褒めてくれる。飲んでいるうちに話が脱線し、セトさんは「わかる」という言葉を使うことに対する違和感を語る。「わかる」なんてことはないはずで、はっちの文章は「わからない!」という態度が根底にある気がする、と。褒めてもらえて嬉しくなる。途中からサキ先輩も合流し、藤原さんは不在だけれど、ボエーズでの打ち上げとなる。ボエーズというバンドを組んだことも(ぼくは楽器が弾けないので「記録係」という名目で同席していただけだけど)、『東京の古本屋』を書く大きなきっかけになっている。

 誰かとお酒を飲むのは久しぶりで、ふわふわする。それと同時に、マスクをつけたり外したりするのが億劫になるので――だからといって当然ながらマスクを外したままで過ごす気にはならず――そうすると必然的に、ツマミに手が伸びる頻度が下がる。口寂しくてツマミを頬張るということはなくなるから、これはこれでよいかもしれない。お酒も、過度に酔っ払ってしまわないようにと、ビールばかり飲んだ。ムトーさんは勝ち割赤ワインを、水だったか炭酸水だったかでさらに割り、飲んでいた。途中で近所のUさんも合流し、シャインマスカットをお土産にいただく。気づけば23時過ぎで、片付けを任せてしまって帰ることに。こんな時間に繁華街を歩くのはほんとーーに久しぶりで、街は静まり返っていて、電車もがらがらだ。