5月12日

 8時に起きて、コーヒーを淹れる。今日もJ-WAVEを流していたら、「これ、誰の曲?」と知人が言う。曲を受ける形で別所哲也が「藤井風」と名前を告げる。そして、「土の力から、風の力へ」と謎のことばを口にする。「ついこないだまで加湿してたのに、もう除湿を使うようになって。J-WAVEも除湿で行きますよ」。何を言っているのだろうと思いながらradikoを止めて、扇風機をつけ、寝転がる。それを眺めていた知人が「ほんまに羨ましい。どうせ今日もずっとごろごろして、クロノトリガーやるだけやろ」とぼやく。そんなふうに過ごすわけないだろうと鼻で笑っていたはずなのに、今日はクロノトリガーしかやらなかった。昼に麻婆豆腐丼を平らげ、引き続きクロノトリガーを進めて、そろそろ14時過ぎたころか、読書も進めておかないとと時計を確認すると、16時をまわっていた。近所の八百屋に出かけ、晩酌のツマミを考えるもメインが浮かばず、皿を持って「たこ忠」に行き、たこぶつと初がつおの刺身を買ってくる。

 八百屋にヤングコーンがごろんと並んでいて、せっかくだからと買ってきたものを、皮を剥いていく。ヤングコーンが成っている姿を見たことがなかったけれど、この段階でもう普通にトウモロコシの姿になっているのだなと思いながら剥いていくと、そのほとんどが皮で、中身はちょこっとしかなかった。いや、サラダなんかについてくるヤングコーンと同じサイズではあるのだが、中身はこれだけなのだとしたら、皮ごと運ぶのはコストが大変だろうなと、ここに運ばれてくるまでの過程を思い浮かべる。皮を剥き終えたところで、LINEがぽこぽこ鳴る。企画「R」の戯曲があらためて送られてきて、それに関することばが添えられていた。9日前に初稿が送られてきていたのだが、加筆されている。そして、自分が読み落としていたものに気づき、グループLINEに反射的に言葉を返す。普段は反射的に言葉を発さないようにと心がけているけれど、こういう場面では反射的な言葉を伝えなければと思って、書き綴っておく。

 ヤングコーンはバター醤油で炒めて、かぼちゃの煮物を作り、20時に帰宅した知人と晩酌。嬉しそうに初がつおを頬張る。この、たまねぎも上手に晒しちょってよ、と感動している。「飼う?」と聞くと、「飼う、飼う」と知人が嬉しそうに答える。8年前にふたりで会津を訪れ、馬刺しを食わせる店に入ったとき、コウネを頬張りながら「もう、これ、ずっと口の中に飼っておきたい」と知人が口にした。ずっと口の奥に飼っておきて、ときどき噛んで味わって――永遠に味わっていたい、と。晩酌しながら眺めたのは『有吉ぃぃeeeee!』だ。いよいよリモート収録に切り替わり、タカトシのふたりは自宅にいながら、モニターで映像を繋ぎながら、オンラインゲームで一緒に遊んでいる。楽しそうだ。ぐるぐる回転する画面を眺めていた知人が、「こんとなゲーム、全然できんのよ」とぼやく。「マリオカートをやろうとしても、前に進めんかったくらいやけ」と。テレビ画面の中では有吉が敵を次々撃ち倒してゆく。「戦争になったら真っ先に死ぬやろね」とぼくが答えると、知人が急に暗い顔になる。