4月19日

 7時過ぎに目を覚ます。8時半にジョギングに出る。昨日から企画「R」のことを考えていたこともあり、今日はいつもと違うルートを選んだ。うちを出て団子坂を下り、三崎坂を上がり――と、ひたすらまっすぐ走ると、慶喜」という蕎麦屋には「新型コロナ禍の為4/15(水)〜5/7(木)まで休業とさせて頂きます」と貼り紙が出ていた。6日ではなく7日までとなっているのは、木曜日が定休日だからだろう。休業の貼り紙を見かけるたび、写真に収めてしまう。カヤバコーヒーには「只今リニューアルオープンに向け準備中!」と出ていた。

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 住所表示が上野桜木、上野公園と移り変わってゆく。住所に「公園」が入っている土地は他にどれくらいあるのだろう。「犬を飼っている人たちの集会が開催されていて、あちこちでシャッターが切られている。このあたりの広大とした風景に圧倒されていたけれど、その来歴のこと、昨日までろくに考えていなかったなと思う。セトさんが引っ越し祝いにプレゼントしてくれた『上野公園』(東京公園文庫)も、昨日になってようやく読んだ。西郷隆盛像を眺める。そして、後ろにある彰義隊の墓をじっくり見た。西郷隆盛の後ろ姿を見続ける格好になる。どんな気持ちがするだろう。上野広小路が見晴らせる、公園内には人影はまばらだ。公衆電話の説明書きやら、看板の説明書きやら、ありとあらゆる説明書きを読んでいる人がいた。そうやって時間を潰しているのだろうか。ピンク映画館は休館中で、「がんばりましょう!!」という貼り紙が何枚も出ていた。帰りに「ベーカリーミウラ」に立ち寄ると、行列ができている。ソーシャルディスタンスとは言えない程度に、感覚をあけて並んでいる。コーンチーズのパンをふたつ。

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 シャワーを浴びてコーヒーを淹れる。仕事をしているあいだは別だが、ただ無音の中で過ごすということができなくて、コーヒーを淹れているあいだもYouTubeか音楽を再生している。今日は何を聴こうかとアップルミュージックを開くと、ボブ・ディランの新曲が配信されていた。「I Contain Multitudes」。マルティテュードを「有象無象」と訳したのは浅田彰だと、検索で出てくる。キッチンのテーブルで作業していると、窓の外をたくさんの人が行き交うのが見える。キャッチボールをするにも手狭な広場で、4組くらいの家族が過ごしている。公園がすごい密度になっとるでと知人を呼ぶと、あそこはディズニーランドぐらい楽しい場所ですので、と知人が妙なことを言う。なぜだか満面の笑みである。その広場にはベンチすらなく、レンタサイクルが何台か停まっていて、あとは井戸があるくらいだ。

 昼は焼きそばを作る。午後、昨日に引き続き読書。16時半になったところで、知人と一緒にアパートを出る。久しぶりに寿司が食べたくなって、歩いて数分の場所にある「ちよだ鮨」に出かけた。千駄木の交差点にある今川焼きの店に、密な行列ができている。あの距離は危ないやろと知人に漏らすと、「密です」と知人が物真似をする。都知事がそう発言した日は、ギャグめいた気持ちで受け止めてしまったけれど、日が経った今ではもう笑うことができずにいる。帰りにセブンイレブンに立ち寄り、ビールと賀茂鶴を買い求める。レジには「マスクやビニールでお客様の声が聴こえずらくなっており、聞き返すことがございますがご容赦ください」といった趣旨の貼り紙があり、暗澹たる気持ちになる。こんな状況になっても接客してくれている店員に、酷い言葉を浴びせる人間がいるのか。

 これを書いているのは4月19日の17時、晩酌を始めたところだ。いつもなら翌朝になって日記を書くのだが、明日は企画「R」のために始発電車に乗ることになっているので、今のうちに書いておく。知人は同じ卓袱台でパソコンに向かっている。仕事をしているのかと思っていたら、「この世でいちばん好きな、みほり峠の唐揚げの素、通販で買っていい?」と嬉しそうに言う。