10月14日

 6時過ぎに目を覚ます。7時半、ジョギングに出る。建物が解体されている場所の隣に、ガードパイプに腰掛け、じっと工事の様子を眺めている老人の姿があった。そこは誰かが住んでいた場所ではなく、モデルルームかなにかが立っていた場所だけれども、そんな場所の解体工事をじっと見つめる人もいるのだなと思う。道端にサルビアの花が咲いている。小さい頃にこの蜜を吸っていたのだと思うと、不思議な感じがする。今このサルビアの花の蜜を吸えと言われたら、「汚い」と反射的に感じるだろう。それは、ここが東京で、排気ガスにまみれているということだけが理由ではない気がする。大人になって感覚が変わったとすれば、何が変わったのだろう。そして、その「変わった」というところには、今年に入って変わってしまった感覚も大いにある。

 不忍池を見たところで引き返し、シャワーを浴びる。コーヒーを淹れて、茹で玉子を作って2個頬張り、『AMKR手帖』の原稿を書く。話を聞かせてもらったのは長年そのお店を取り仕切ってきた方だけれども、そのお店には下の世代の方たちも働いている。話を聞かせてもらうことができなかったその方たちの存在をどう滲ませるのかを考えているうちに、原稿全体を通じて、その方たちにも言葉を届けたいような気持ちになってくる。昼はサッポロ一番塩らーめんに、もやしと豚バラ肉を炒めたのをのっけて平らげる。13時過ぎに『AMKR手帖』の原稿はひと段落したので、次はRK新報の原稿を書く。こちらも17時過ぎには完成する。こちらは締め切り――というのは特に設定されていないのだけれど――まで少し時間があるし、今度の日曜からまた沖縄に出かける予定があって、追加取材もできるので、しばらく寝かせておくことにする。『AMKR手帖』の原稿を読み返して、少し手直して、メールで送信。

 18時、丸美屋の素を使って麻婆豆腐(辛口)を作る。ビールを飲み始めながら、明日から3日間の取材のことを考える。「ウェブHの雑誌」の連載が、ようやく取材を再開できることになった。「この連載の取材を再開するとしたら、絶対にこの店のことを」と思っていたところに取材できることになって嬉しい限りなのだけれども、半年以上あいだが空いているので、どんなふうに取材していたんだっけかと不安にもなる。21時過ぎ、知人の帰宅に合わせて豚バラ肉とズッキーニの炒め物と、万願寺とうがらしの煮浸しを作っておき、録画したテレビ番組を眺めながら晩酌をする。