2月4日

 7時半に起きる。布団の中でツイッターを眺めていると、ぼくが昨日買ってきた本を紹介している人を見かける。その人が紹介している本はいつも面白そうで、関心領域も似ていると思う。ただ、委員会は、「この本を検討したいです」と手を挙げて、次の委員会で「この本、面白かったので書評したいです」と決定し、順番がまわってきたタイミングで書評が掲載されるので、どうしても遅くなる。そうすると、なんだかタイムラインを見て書評しているかのような気持ちになってしまうので、昨日買った本を朝のうちにツイートしておく。さもしい振る舞いだなと、我ながら思う。

 コーヒーを淹れる。昨日神保町に出かけたときに「伯剌西爾」で買っておいた豆で淹れると、家が少し「伯剌西爾」の匂いになる。11時50分に家を出て、武蔵小金井駅へ。どこかでお昼をと思って駅前を彷徨う。そばの気分だったがそば屋が見当たらず、結局「すき家」でねぎ玉牛丼を注文。「すき家」を見かけると、危口さんの引っ越しを手伝ったときにこれをご馳走になったことを思い出し、ねぎ玉牛丼ばかり頼んでしまう。あとからお年寄りが入ってきて、店員に注文する。牛丼が運ばれてくると、「お金、いま払っちゃおう」と言って、店員に「いえ、お食事のあとで」と断られている。

 ねぎ玉牛丼ってこんな濃い味つけだったっけなと思いながら店を出て、駅前で編集者のTさんと待ち合わせて、バスに乗って「プール前」という駅で降りる。取材させてもらいたいお店にお邪魔して、ご挨拶。帰りは駅まで歩き、駅近くの店で打ち合わせ。わりと混雑していたうえに、隣のお客さんがずっと大声で会話していて、「別の店にしかせんか」と言えばよかったと後悔する。隣のお客さんの顔が見えないように仕切りがあるとはいえ、どうしても気にかかってしまう。帰り際に、そのテーブルの前を通ると、ビールを飲みながら楽しそうに談笑している。それの何が悪いのかという気持ちと、どうしてこの状況下でこんなに大声で会話ができるんだろうという気持ちと、ふたつが浮かんでくる。

 帰宅するともう16時だ。シャワーを浴びて顔と頭をハンドソープで洗い、テープ起こしをする。19時半から晩酌。御茶ノ水で乗り換えるときに立ち寄った「成城石井」で割引になっていた、3種きのこと自家製ベーコンのトリュフ風味リガトーニと、海老の生春巻き、それに麻婆豆腐がツマミ。リガトーニと麻婆豆腐は平気だけど、生春巻きは、割引になったもの(つくられてから時間が経ったもの)は、ちょっと鮮度が気になるかもしれない。

 昨日の日記に書きそびれていたこと。昨日の午後、テレビをつけっぱなしにしていると、『ミヤネ屋』で「コロナ禍 求められる“リーダー”」という特集を組んでいた。海外の政治家などを取り上げ、それに比べて菅総理は、という流れになる。そこで総理大臣の会見の映像を流しながら、「3つの改善点」を挙げていく。いよいよ政治が地に落ちたものだなと感じて、思わず録画ボタンを押す。政治家なんて、言葉を発信する姿に力がなければ無意味だろうに、それをテレビの情報番組で、通信簿のようにダメ出しをされている。そして、総理を批判する側のテレビが、問題点を指摘してもらう役として出演を依頼したのが、政治家でも、文学者でも、たとえば平田オリザのように総理大臣のスピーチライターを経験した言葉の専門家でもなく、『世界最高の話し方―1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』という本の著者である。その著者プロフィールには「これまでに1000人を超える社長、企業幹部に、「秘伝のコミュニケーションノウハウ」を伝授。その劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している」とある。そして、そんな「伝説の家庭教師」が指摘した「解像ポイント」を、モノマネ芸人に実演させている。こんな時代に突入したとなると、マナーをインストールしただけの人物が台頭する日がやってくるかもしれないと思うと、おそろしくなる。

 もうひとつ、書き忘れていたこと。うちにはソーダストリームがある。もう何年も前から使い続けている、炭酸水を作れるマシン。ハイボールにせよチューハイにせよ、強炭酸のほうが好みなので、何度もボタンをプッシュして炭酸を注入するのだけど、そのたびにブブブブブと大きな音が響く。たぶんこの音は上の階にまで響いているだろうなあと、いつも申し訳なく思っていた。そして、マシンにボトルをセットするときに、ボトルの口の部分をくるくる回してセットするのだけれども、その手間がいつも面倒に感じていた。先日、知人とヨドバシカメラに出かけ、ガスシリンダーを交換してもらっているあいだ、知人が最新モデルのソーダストリームを眺めていたことがきっかけになって、YouTubeで最新モデルの映像を検索してみたところ、ほとんど音が響かない上に、くるくる回さなくともボトルをセットできるようになっていて、今の世の中はこんなに便利になっておったのかと大いに驚き、ヨドバシカメラのポイントがちょうど2万円近く残っていたので、昨日の午前中にネット通販で注文したところ、昨日の夕方にはインターホンが鳴り、荷物が届いた。なんということだろう。「玄関に置いておいてください」と伝えながらも、すぐにいそいそ階段を降りていくと、玄関前にバイクが止まっていて、配達員の人が(ちゃんと配達したという証拠を残すためなのだろう)荷物を玄関前に置いた様子を写真に収めているところだった。すぐに開封してセットして、知人の帰りを待った。19時過ぎに帰宅した知人は、「えっ、もう頼んだん?」と驚いている。最初の1本目をセットして、ガスを入れてみる。ほとんど音もなく炭酸水が出来上がる。少し感動するのと同時に、今までは一体何だったんだろうとも思ってしまう。