3月20日

 7時過ぎに目を覚まし、コンビニに出かける。駅の近くにミニストップがあり、近所には店舗がなくてほとんど利用することもないので、せっかくだからとミニストップまで朝ごはんを買いに出掛けてみる。店舗で作っているというおにぎりがあったので、明太子と玉子のやつと、それにホットコーヒーをテイクアウト。11時半にワークショップ会場に移動し、まずは皆でお昼ごはん。駅前ビル・ラトブの1階にある(元・回転)寿司屋「おのざき」に入り、まずはいわき5品盛と瓶ビールを頼んだ。もちろんこんなタイミングで飲んでいるのは僕だけだけれども、寿司屋に入って酒を飲むなというのは無理だ。

 12時50分に会場に戻ると、すでに参加者の皆さんが到着し始めている。M&Gの皆は13時半からだと勘違いしていたけれど、13時からだったようだ。いそいそと取材の体制を整えているうちに、ワークショップが始まる。今月は2階と3階に分かれての作業になるのだけれど、自分の身を置けるのは片方のフロアだけだ。2階にはiPhoneの録音アプリを、3階にはICレコーダーを回しておき、3階のF.Tさんのワークショップの様子を見届ける。18時にワークショップは終わり、3階でひとり地図を眺めていると、誰かが階段を上がってくる音が聴こえてくる。とれと同時に、ギュインギュインギュインギュインと不吉な音が響く。階段を上がってきていたのは制作のKさんで、鳴り響いているのは地震速報だった。数秒後に建物が大きく揺れ始め、おーお、と揺れの状態を探りながら立ち尽くす。しばらくふたりで立ち尽くしていたのだけれども、おそらくほぼ同じタイミングで、同じことを考えつく。この建物はかなり古く、もしも3階と2階を結ぶ階段が塞がれてしまったら――顔を見合わせ、2階に降りると、皆が縁を描くように並び、身をかがめていた。

 ほどなくして揺れは収まり、劇場のTさんの運転するクルマで劇場まで移動する。控え室に案内されたところで、だけどこれ、トークイベントは開催するにしても、配信はやめておいたほうがいいんじゃないのとFさんが言う。地震があったときには、トークイベントの開始まで1時間を切っていた。この1時間のあいだに、今の地震で大きな被害が出た土地はなかったのだろうかとか、津波は大丈夫だろうかとか、トークイベントの会場は無事だろうかとか、いろんな心配をそれぞれがしていただろうけれども、地震が起きたばかりの土地からトークイベントの配信をするのはどうだろうかというところまで、あの時間の中で考えていた人がどれだけいただろう。ぼくは、ただ同席するだけの立場だったこともあるけれど、そんなところまで考えは及んでいなかった。結果的に、配信は後日アップされることになった。