8時過ぎに起きる。新しい枕が快適だ。横になっているだけでほぐされるというか、首や肩が正しい位置に矯正されていくのを感じる。起きてすぐ、大晦日に書いた原稿を送信する。昼食、納豆オクラ豆腐入りうどんを食し、構成仕事を進めて、こちらも夕方には送信する。夜、知人の帰りを待って塩ちゃんこ鍋。『芸人キャノンボール2016』をもう一度眺めながら、食す。

 すっかり満腹になったところで、ケータイが鳴る。朝に原稿を送った相手だ。他の仕事をしていても、本を読んでいても、食事をしていても、ずっとそのことが気にかかっていた。電話を取ると、第一声、「めちゃくちゃ面白かったです!」と興奮気味に感想を伝えられ、本当に嬉しくなる。依頼された枚数をそれなりに超えてしまっていたのだが、「これを削るのは本当にもったいないので、このまま行きましょう」と言ってもらえた。

 その原稿は、僕に依頼された原稿としては一番長い枚数のものだ。これまで仕事をしたことがあるわけでもないのに、それだけの枚数を依頼してくれるというのが嬉しかったし、「ドキュメントを」という言い方で依頼されたのも嬉しかった。この人はきっと、僕が心の底から面白いと思えるものを書けば受け取ってくれるのではないかと思った。そのことを、2ヶ月間ずっと考えていた。

 原稿の構想がまとまってから、僕にとっては兄貴のような存在である編集者や、数少ない友人の編集者に会うたび、「本当に面白い原稿を書けると思います」と話していた。「橋本君がそんなこと言うの、珍しいね」と言われたが、たしかにそんなことを言うのは初めてだった。

 とはいえ、実際に書き始めてみると、誰かが読んだときに面白いと思ってもらえるのかどうか不安だった。「誰かに」というよりもまず、編集者の方に面白いと思ってもらえないことにはどうにもならない。だから今日、ずっとそわそわしていたのだ。本当にほっとした気持ちになって電話を切る。すっかり嬉しくなって、「アイスが食べたい」という知人のためにハーゲンダッツを買いに出かけたりもした。今日は酒を飲まなかった。