朝8時に起きる。フジロックから帰ってきた知人はそのまま眠り始めた。午後、お台場へ。鞄は持たず、ノートとペンだけ。りんかい線に揺られながら、手持ち無沙汰でノートをめくる。先月下旬に沖縄のコンビニで買ったノートはほとんど一杯になってしまった。客席で考えたこと、これは書き留めておかなければと思った台詞を走り書きでメモしていると、どうしても贅沢にページを使ってしまうので、あっという間に1冊使い切ってしまった。

 13時30分、M・Nさんに取材。20分ほどで終えて、食堂でポークカレーを食す。一階では夏恒例のイベントが開催されていて、多くの人で賑わっている。懐かしい気持ちになる。東京駅の地下街にテレビ局のショップが並んでいる風景を目の当たりにすると、今でこそ白けた気持ちになるけれど、昔は輝いて見えていた。初めてテレビ局を目にした時は「本当に実在するのだなあ」と嬉しくなったし、今日もこうして、バラエティ番組なんかでよく耳にする食堂でわざわざカレーを食べている。食堂内にあるテレビではお昼の情報番組が流れていて、松居一代の姿が映し出されている。自宅にいればチャンネルを変えてしまうけれど、食堂内にいる人たちのほとんどはテレビを見上げている。

 帰宅してもまだ知人は眠っている。構成仕事に取りかかるもまったく捗らなかった。今日は夏らしい天気で、7月最後の日だ。どこかに出かけたいけれど、出かけたい場所が浮かばない。京都の鴨川を歩きたいけれど、ここから鴨川は遠過ぎる。誰かと話したい気分だけれど、知人はずっと眠り続けている。少し前まではこういう日に飲む相手がいたけれど、いなくなってしまった。それは自分が選んだ距離感なのだから仕方のないことなのに、まだ誰かと話したいなんて思ってしまっている。何を話すというのだろう。

 どこに出かけよう。結局何も思い浮かばず、冷蔵庫に入っていたアサヒスーパードライを手に街へ出る。ゆらゆら歩く。結局思い出横丁のいつもの店に入り、ホッピーセットを注文する。ゆっくり時間をかけて飲み干して、靖国通りをふらふら歩き、新宿3丁目「F」。店に入るなり、キタジマさんから伝言を預かってると言われてギクリとする。焼酎の水割りを作ってもらっているあいだ、ずっとヒヤヒヤした気持ちでいたけれど、「すごい良かったって褒めてたよ」と言われて嬉しくなる。「俺なんかも勉強になるところがあった」とも。キタジマさんは40年前から沖縄を撮っていて、たしか出発点となったのはコザだったはずだ。だから、キタジマさんの感想を聞くのは緊張していたのだけれど、その伝言を聞けてホッとする。でも、次はもっといい原稿を書く。

 23時50分に店を出て、オリオンビールを手に歩く。もうすぐ7月が終わる。僕のケータイの待受画面はずっと、1年前の7月31日に鴨川の三角デルタで撮影した写真に設定されている。皆がそこで花火をしている写真だ。あれからもう1年が経つ。あの時聴こえてきたブラッドサースティ・ブッチャーズの「July/七月」を今日も聴いている。我ながらセンチメンタルだ。一体何がしたいのか、自分でもわからないけれど、その曲をリピートしながらアパートまで1時間かけて歩いた。