5月16日

 7時過ぎに起きる。温泉があるというので、朝から湯につかる。他の人に聴こえないくらい小さな声で、「恋しい日々」を歌う。歌詞をキッチンに貼り出してあるので、歌詞をすっかりおぼえている。風呂から出ると、自分のスリッパが消えている。他の人とは混じらないように、ちょっと離れた位置に置き、絶対に間違われたくないから変な置き方をしておいたのに、どうして間違えて履いていくのか。腹立たしい気持ちになり、ちょっとだけ引っ掛けて、ほとんど裸足で部屋に戻る。昨日と同じ服で撮影したほうがよいのだろうなと、シャツと靴下だけコインランドリーで洗濯する。

 洗濯しているあいだに、最上階のレストランで朝食バイキング。入ってすぐの場所にジンギスカンがあり、嬉しくなってついたくさん取ってしまう。「ななつぼし」のごはんもうまく、おかわり。10時にロビーで集合して、ロケに出る。正面に見える山にはまだしっかり雪が積もっているけれど、田んぼには水が張られていて、水色に光っている。あぜ道にはたんぽぽが咲き乱れている。チューリップが植えられた道も多く、風景が鮮やかである。出番が終わってインサートを撮影しているあいだ、店主の方にあれこれ話を伺う。昨日のお店でも、ロケとは別に、いつでも原稿を書けけるようにと店主の方に話を聞かせてもらっていた。若い世代より、高齢の店主の方に話を聞く方が性に合っているなと思う。それを突き詰めるのがよいのか、そこに安住せず挑戦するのがよいのか、わからない。まあでも、それを決めるのは自分ではなく、仕事を依頼してくれる編集者なのだろう。

 16時に旭川空港に到着して、お礼を言ってお別れをする。どうか企画が好評で、第二弾がありますように。わざわざ航空券とホテルを手配してくれて、取材先まで連れて行ってくれて、おまけに出演料まで払ってくれるなんて、なんてありがたいことだろう。「出演料が安くて、ほんとお恥ずかしいです」なんて謙遜されていたけれど、これまですべて自腹で取材を重ねてきたので、なんて幸せな環境だろうと嬉しくなる。搭乗時間まで3時間半あるので、電源の使える喫茶店に入り、パソコンを広げて仕事をする。ふと空港の外に目をやると、牛が放牧されているのが見えた。お土産を購入したのち、せっかくだから最後に寿司でもと思ったけれど、お寿司屋さんのショーウインドウを確認すると、一番安いセットでも1600円とある。寿司は諦めてラーメン屋に入り、サッポロクラシックと醤油ラーメン。札幌は味噌、函館は塩までは知っていたけれど、旭川は醤油なのだと今回の旅で知る。そういえば昼も醤油ラーメンを食べたのだった。