5月10日

 10時まで寝てしまった。ケータイを開くと、ハッシュタグがずらりとタイムラインに並んでいる。すぐに思い出されるのは、3月11日、法務大臣がむちゃくちゃな答弁をしていた姿だ。どうして今、と思っていると、8日から改正案が審議入りしたらしかった。もうひとつ、脳裏に浮かんでくる風景があった。あれは2015年の夏、永田町でデモが連日開催されていたときだ。デモに参加する人を冷笑するというわけではまったくなく、あくまで僕個人の問題として、自分が群衆の中の「一」になることにはずっと違和感があった。誰かとわかり合うことなんてできるのだろうかと思っているのに、群衆として「連帯」したり「団結」したりできるだろうかと二の足を踏んでしまう。ただ、2015年のよく晴れた日に、今日ばかりはと思って、高田馬場から永田町まで歩いた。そこで立ち止まり、声を挙げなくとも、頭数の「一」としてその場にいようと思っていた。そのつもりで1時間以上歩いて出かけたのに、たどり着いてみると足が止められず、そのまま永田町を通り抜けた日の記憶がよみがえってくる。

 コーヒーを淹れて、「ベーカリーミウラ」の食パンを焼いて食べる。4枚切りだとすごく贅沢に感じる。午前中は、数日前にダウンロードしてしまったクロノトリガーに没頭してしまう。昼、カレーライスを平らげ、なんとなしにレンタカーの料金を調べてみる。たとえば『月刊ドライブイン』で取材させてもらったお店のうち、陸路でたどり着けるところにレンタカーで出かけ、ZOOMを駆使して距離を保って取材をして、『ドライブイン再訪』というリトルプレスを作ってしまおうか――そんなことを想像する。新幹線や飛行機よりは、感染を拡大させてしまうリスクは少なくなるだろう。ただ、それでもリスクはあるのだろうし、県外ナンバーだと貼り紙をされてしまいそうだ(それはそれで目の当たりにしてみたい気もする)。

 企画「R」のことも考える。次回は小石川から雑司ヶ谷、そこから江戸川橋まで引き返し、都電を乗り継ぎ日比谷に至るルートが理想だけど、都電は廃線になってしまっているので、江戸川橋からはレンタカーで移動しようかと考える(地下鉄では目にすることができない、地上の風景を眺めながら移動したいところ)。ただ、普通のレンタカーに4人で乗り合わせるのも密だ。それならタクシーに分乗するほうが安全だろう。最近読んでいる『こころ』、何年かぶりの再読だけれども、舞台が今住んでいる場所に近く、これまでとは違った身近さを感じる。Kが夏に住み込んだ寺は「大観音」の近くだというから、うちから歩いて2、3分の場所だろう。そして、小説に描かれる「電車」という乗り物の新しさも印象深い。

 『こころ』を254ページまで読んだところで日が暮れた。知人に明太子とアボガドのポテトサラダを作ってもらって、晩酌を始める。今日はTSUTAYA discusに加入し、『ブロークバックマウンテン』をレンタルして観た。犬が羊の群れを追い立てる様子を観て、「次に生まれ変わったら牧場犬になりたい」と知人が言う。