9月28日

 5時過ぎに目を覚ます。ごはんを炊き、コーヒーを淹れ、たまごかけごはんを平らげる。いつもほとんどかき込んでいることに気づき、ちょっとは噛むように意識する。朝のうちに編集のTさんからメールが届き、東京堂書店の週間ランキングで総合部門の1位に『東京の古本屋』が入ったとある。そんなことあるのだろうかとびっくりする。並び始めたのは先週金曜日だ。もちろん東京堂書店を訪れるお客さんには面白がってもらえるんじゃないかという気持ちはあるし、神保町の書店だからというのもあるにしても、ちょっとびっくりした。参考文献リストの途中経過を送り、「こういう感じに仕上げたいんですけどいかがでしょうか?」と相談する。また、地図の素案を作り、スキャンして一緒に送っておく。

 昼、近所の八百屋に買い物に出かけ、焼きそばを作る。ソースを買い忘れたので、野菜をフライパンに投入したところで醤油を振って味を足したが、そんなに違和感はなかった。15時過ぎ、大手町経由で千代田線と半蔵門線を乗り継ぎ、神保町へ。東京堂書店に行ってみると、ほんとに1位のところに『東京の古本屋』が置かれている。しばらく眺めて、記念に写真を撮っておく。東京どう書店と三省堂書店をのぞいたあと、「伯剌西爾」でコーヒー豆を200グラム買って、都営新宿線で岩本町、神田川を横目に少し地上を歩き、秋葉原から日比谷線で上野に出る。エレベーターを待っていると、スタバのカップを手にした若者ふたりがやってきて、マスクをあごにずらしたままコーヒーを飲んでいる。そちらに向き直って凝視していると、視線を逸らしたもののマスクをつける素振りはなかったので、エレベーターはやめにして、エスカレーターで8階の「ニトリ」へ。買い物客が家具やちょっとした収納道具や生活用品を物色している姿を見て、ここにいる人たちは自分の暮らしている環境をちょっと変えようとしたり、新生活を始めようとしている人たちなんだなと思うと、しばらく眺めてしまう。

 ぼくも目当ての品物以外をざっと見たあと、マットレスの棚へ。どこかのネット通販サイトで買おうと思っていたのだけれど、ネットで安価な商品を見ると「すぐにへたった」という評が一部で出ていたり、「梱包材の匂いがしばらく取れなかった」と書かれていたり、ニトリの商品も通販だとぺしゃんこに圧縮されて送られてくるというのが気にかかって、それなら直接買って持ち帰ろうと決めたのだ。マットレス売り場に「かため」と「ふつう」のサンプルがあって、腰や背中が痛い自分はかため一択だろうなと思いつつ、腕を横たわらせて、寝ている感触を想像する。セミダブルのサイズでかためだと、1商品しか並んでいない。ネットで見ていたのは三つ折りに収納できるものだったけど、店頭にあるのは四つ折りだ。まあ、そのほうが畳んだ時に場所を取らないってことだろうなと勝手に納得しつつ、マットレスを抱えてレジで会計し、両手で抱えてエスカレーターに乗り、タクシーを拾って帰途につく。家に到着したところで、そんなふうに両手で不恰好に抱えなくても、サイドに取っ手があったことに気づく。

 シャワーを浴びて、さっそくマットレスを広げてみる。そこで四つ折りの意味が判明し、愕然とする。ぼくは蛇腹のように畳めるものだと思っていた。そうやって折り畳めるのであれば、いつも敷き布団はその畳み方をしているから、マットレスを敷布団ごと強引に畳めるだろうと思っていた。でも、なんといえば良いのか、買ってきたマットレスは一度縦方向に畳んで、次は横方向に畳む、というタイプのものだった。これだと、一度敷布団と掛け布団をマットレスの上からどかして、マットレスを畳んで、その上に畳んだ敷布団を重ねる、という作業を毎日繰り返すことになる。それはちょっと億劫なのではと思いつつも、横になってみると、明らかに寝心地がよかった。18時からオンラインで読書委員会。前回検討する本に選んだものは、すべて見送ることにしたので、出番は少なめだった。20時ごろに委員会が終わり、ツイッターを開くと、こんなツイートが目に留まる。

Title(タイトル)
@Title_books
汗にまみれながら本を動かし、何百円という単位の本を売り買いする。そうした商売を選んだ古本屋の店主に密着し、うれしいことつらいことをそれとなく聞いた。生きているという実感のある人生。耳を澄ませながら黙ってそこに立つ橋本さんならではの取材です。橋本倫史『東京の古本屋』(本の雑誌社
午後6:59 · 2021年9月28日

Title(タイトル)
@Title_books
東京の古本屋の中で、わたしが前職でお世話になった岡島書店さんがいてうれしいです。戦後、チリ紙交換から古本屋になる人が多かった話、文字が印刷されてさえいればどんな本でもよかった時代。帳場の後ろでうどんを食べる姿がかっこいい。
午後7:04 · 2021年9月28日

ときわ書房志津ステーションビル店
@tokiwashizu
どこか長閑なイメージとは裏腹に、古本屋も生き残る為の工夫や奮闘があり、商売としての忙しなさを見る。そしてコロナ、再開発の波。
名著「ドライブイン探訪」の著者が東京の名店10軒に密着取材。今の古本屋の姿を写し取った店の息遣いの記録。
橋本倫史『東京の古本屋』本の雑誌社
 #本日の注目本
午後7:51 · 2021年9月27日

 なんといえばいいのかわからないけれど、あまりにも見事な紹介文に、びっくりする。Titleの辻山さんとは面識があり、トークや展示を開催させてもらった縁があるとはいえ、そんな知り合いは膨大にいるだろう。毎日たくさん本が入ってきて、毎日たくさん仕事があるなかで、新入荷の本を紹介するときに、ここまでぴたりとした言葉を綴れるものだろうか。取材現場に同行してもらったわけではないのに、文面を読み込んで、「耳を澄ませながら黙ってそこに立つ橋本さんならではの取材」と書けるのは、すごいことだと感服する。ぼくは誰かの文章を読んで、そこまで深く感応できるだろうか。今のように月にだいたい2本のペースで書評を書くというのならできたとしても、毎日の新入荷の紹介でそれができるというのは、すごいことだ。