10月14日

 5時過ぎに目を覚ます。昨日は久しぶりに外で飲んだせいか、いつもより体が重い。外だとやはりペースが上がるのだなと実感する。ベッドの中でぐずぐず過ごし、ストレッチをする。原稿を考えなければならないのに、スイッチが入らず。11時過ぎにホテルを出て、タクシーを拾って「瑞泉酒造まで」と伝える。その少し手前で降りて、食堂へ。『沖縄島料理』に、名前を伏せて掲載されていたお店。そのお店を紹介するテキストの中に、「ぐつぐつ沸騰させていた味噌汁がしょっぱくて思わず笑った」という一文があり、いやいやいくらなんでもその書き方はないだろうと思った。もちろん味噌汁のしょっぱさに言及する記事もありうるだろうけど、それにはかなり丁寧な言い回しが求められるはずだと思う。もしかしてよっぽどしょっぱいのか、どんな感じのお店なのかと興味を惹かれ、食べにきた。

 原稿の中でも、すべてセルフサービスだと書かれていたので、少し気を張りながら扉を開く。先客がひとりだけいて、ごはんと味噌汁を頬張っている。沖縄的な意味での「味噌汁」ではなく、普通のサイズの味噌汁だ。どうやらゴーヤーちゃんぷるの定食を頼んで、ごはんと味噌汁だけその場で平らげ、ゴーヤーちゃんぷるはタッパーに入れてもらって持ち帰るようだ。お店のお母さんは調理中だから、邪魔をしないようにとセルフでお茶だけ入れてテーブルにつき、様子を伺っていると、先客のお父さんから「あい、注文しないと」と促される。「すみません、ゴーヤーお願いします」と言うと、カウンターの中にいる、おそらくお孫さんが聞き留めて、「ゴーヤー!」と、何度かお店のお母さんに伝えている。

 お店のお母さんは、調理しながら、何度もお孫さんの名前を呼ぶ。今は学校が秋休み(?)らしく、お孫さんはふたりいて、年長のほうの子はケータイを触っていて、おそらく年少の子のほうがずっと手伝いをしている。家業を手伝うことに微妙な年代を迎えているのだろう。ほどなくして運ばれてきたゴーヤーちゃんぷる定食はとても美味しく、もりもり平らげる。12時になったところで作業服姿のお客さんたちかどどどっと来店し、事前に電話で注文を入れていたのだろう、「はい、首里城さん!」とお母さんが言い、お孫さんが料理を運んでゆく。

 食事を終えて、ゆいレールで古島へ。今日の朝日新聞のサンヤツに「東京の古本屋』の広告が出ているらしく、せっかくなので記念に手元に残しておきたく、Googleで検索すると「本土新聞販売所」と言うのが出てきたので、古島駅からそこを目指して歩く。行ってみると、「すみません、個別の販売はしてないんです」と販売所の方が言う。定期購読している人のぶんしか沖縄には届かず、買えるとすれば那覇空港くらいではないかと教えてもらって諦める。その代わりに、というわけでは全然ないのだけれど、画面がひび割れているiPhoneを買い替えたくなり、メインプレイスの「エディオン」へ。まあでも、発売されて1ヶ月しか経っていないし、まだ買えないだろうと思いつつ問い合わせると、256GBなら在庫があり、今更「やっぱり買いません」とも言い出せず、購入してしまう。

 17時過ぎ、取材。小一時間ほどで終える。お店の来歴を伺っているうちに、「MRYSそば」はお話を聞かせていただいた方のお父様が切り盛りされていたお店だと知り、驚く。界隈の店主たちには知られた話なのかもしれないけれど、まるで知らなかった。『みえるわ』ツアーのとき、皆で食べに行ったこともあるし、それ以前に『cocoon』に関連して沖縄を巡ったときにも、夜遅くに皆で食べに行った記憶がある。あの頃はまだ頭の中に地図がなく、今自分がどこにいるかもわかっていなかったけれど、今ではもうパッと場所が浮かぶ。

 取材を終えたあと、界隈をぶらついていると、わりとお客さんが少ないようだったので「足立屋」の外カウンターでビールを注文。はまぐり2個と宇那志豆腐も頼んだ。マスクをつけたり外したりしながら、ビールを2杯と、足立サワーを2杯。19時過ぎに店を出て、栄町に向かう。新しいiPhoneだと、夜景もきれいに撮影できてびっくりする。「うりずん」のカウンターはわりと空いているので、入店し、白百合を2合飲んだ。お店を出て、隣の酒屋で缶ビールを買って、ゴン太の様子を伺うと、どこか風貌が変わっていて動揺する。横たわったまま、足が痙攣しているかのように、小刻みに震えている。最近は目もあまり見えなくなって、あちこちにぶつかることが増えたと、お店のお母さんが言う。宿まで夜道を歩きながら知人にLINEを送り、来月沖縄にきたほうがよいのではないかと伝えておく。