2月3日

 2月に入って、「いよいよ手術が近づいている」という感じがする。1月のうちは「あれ? あと何日だっけ?」と計算しづらかったのに、2月になったことで、今月のカレンダーの中に手術日が見えている。インターネットで、痔瘻のことをまた調べてしまう。痔瘻を抱える芸人のことも調べる。今となっては、ただ、術後にどのぐらい痛みがあるのか、どれぐらい生活に支障をきたすのかということばかり気になっている。ただ、調べてみると、「最近はそこまで痛みは出ない」と書いている病院が多いのと、そもそも「痔瘻は痔の中でもとりわけ痛みの強いタイプ」という記述とも出くわす。自分は今のところ、ほとんど痛みらしい痛みは感じないまま今日に至っている。そう考えると、幸運なほうなのだろうと自分に言い聞かせる。

 10時半ごろ、灘のお寿司屋さんに電話をかける。前に取材で話を聞かせてもらっていて、原稿チェックをお願いするべく、原稿をお送りしてあったのだ。こちらから電話をかけなければと思いながらも、何時に電話をかけたものかと迷っていた。営業中だと、お客さんがいると迷惑になる。ただ、「そうだ、電話をかけないと」と思い出すのは、いつも11時を過ぎたころで、もうそのお寿司屋さんは営業している時間になっていた。今日は珍しく営業時間前に思い出し、電話をかける。電話はつながったものの、「今日はちょっと、節分でばたばたしてて」とお店の方がおっしゃるのを聴いて、最悪のタイミングでかけてしまったことに気づく。また来週お電話しますと伝えて、電話を切る。

 昼間はひたすらドキュメントを書く。今日は2月3日だ。春に出す本は2月13日が校了日だったはずだけれども、今のところまだ初稿ゲラも届いていない。この日程で本って出せるんだったっけと思っていたところに、日が暮れた頃になって初稿ゲラに関するメールが届く。そこにPDFが添付されていて、「紙版は、今からでも直接届けに行けます」と書き添えられている。残り時間を考えると、そんなふうにエネルギーを費やしてもらうのも勿体無いので、PDFだけで大丈夫です、と返信しておく。知人とテレビを観ながら晩酌をする。途中でツマミが足らなくなって、知人にセブンイレブンまで恵方巻きを買いにいってもらう。唯一残っていたという恵方巻きは、「幸福恵方巻き」とパッケージに書かれてあった。コンビニのおにぎりや巻き寿司と同じように、海苔のパリパリ感が食べる直前まで保てるようなパッケージになっている。恵方巻きにパリパリ感は求めてないんだけどなあと思いながら、黙ってひとくち頬張り、恵方巻きをいちど器に戻す。隣に座る知人は、なぜか無言のまま、ジェスチャーで何か語りかけてくる。僕がかぶりついたほうから続けてかじるべきか、あるいは反対からかぶりついたほうがいいのか?――と。そんなに流儀にこだわって食べているわけでもないので、黙ったまま首を傾げると、知人は反対側からひとくちかじっていた。