4月17日

 7時過ぎに目を覚ます。体温を測ると36.8℃でホッとする。昨日の鍋の残りと、冷凍ごはんを解凍し、朝ごはん。珍しく眠気が強く、9時頃まで横になっていた。10時半にアパートを出る。西日暮里駅で地下鉄からJRに乗り換えようとすると、エスカレーターがひどく混雑しているので階段で上がる。昨日の夜、19時ごろでも地下鉄が空いていたので、都知事の会見の効果が出ているのかと思っていたけれど、そういうわけではなさそうだ。秋葉原駅を出ると、改札のあたりや駅周辺で待ち合わせをしている人が多く、避けながらうねうね歩く。地図だとこのあたりのはずなんだけどと歩いていると、壁も扉もないところにPCR検査センターがあった。予約メールを見せて、電子マネーで支払いを済ませ、検査キットと同意書を受け取る。仕切りのあるブースに行くと、テーブルには「汚れたときはお知らせください」と書かれていて、誰かがブースを使うたびに消毒しているわけでもなさそうなので少し不安になり、テーブルには触れないように同意書に記入し、唾液を採取する。

 11時40分にはアパートに戻り、鯖缶とトマト缶のパスタでお昼ごはん。いつもビールと一緒に食べているので、食べるとお酒が飲みたくなるけれど、仕事が詰まっているので我慢する。午後、荷造りをしながら、WEB「H」の原稿を書く。日が暮れたあとはビールを飲みながらも、19時まで原稿を書き、ホッケを焼いて晩酌にする。知人のリクエストで始まったばかりのドラマ『リコカツ』観る。Twitterで『愛の不時着』との相似を指摘する声を見かけたけれど、『愛の不時着』はおそらく運命を信じ込んで邁進するドラマだとすれば、『リコカツ』は運命だと思い込んだことのメッキが早々に剥がれたところからドラマが始まる(ぼくは『愛の不時着』を観ていないけれど、知人に確認したら大体当たっていた)。演出は古いけれど(自衛隊員とファッション誌編集者のキャラクターがあまりにもプロトタイプ過ぎるから、自衛隊員とファッション誌編集者は怒るべきだと思う)、価値観のまったく異なる人同士がどうやって一緒に生きていくのかを描こうとするドラマだと感じる。瑛太演じるキャラクターの価値観はあまりにも時代遅れではあるけれど、こういう価値観で生きている人は今も確実にいる。その価値観を肯定するドラマではないだろうし、これからどんな展開になるのか楽しみだ。今季もドラマを山ほど録画しているけれど、大半のドラマは途中で耐えきれなくて再生を止めてしまう。ただ、松たか子主演のドラマと、この『リコカツ』は最後まで観ると思う。

4月16日

 7時過ぎに目を覚ます。知人は頭が痛いと体温を測っている。渡航が近づいているのでぼくも測ってみると37.1℃。この体温計だと平熱が36.8℃くらいではあるけれど、やや高めだ。昨日の夕方買い物に出たとき、漁サンで出かけてしまって、刺身を作ってもらうあいだ外で待つことになり、思いのほか寒い中佇んでいたせいだろう。念のためにと薬を飲んで、今日の予定を立て、ネットで注文できそうな資料を探す。日曜から遠出するのに、今日食材を買っても余らせてしまうからと、セブンイレブンでちゃんぽんを買ってきて平らげる。午後から五反田の古書会館や渋谷のタワレコに行くつもりでいたけれど、このまま体調が下向いてしまうと検温で引っかかってややこしいことになりかねないからと、ポカリを飲んで横になり、原稿を練って過ごす。

 それでも15時半にはアパートを出て、国会議事堂前駅へ。官邸前と議員会館前でそれぞれデモ(?)が開催されていたけれど、メッセージを聞き取ることはできなかった。国会図書館に入り、資料を検索する。「海洋博」で検索すると膨大に出てくるので、そのすべてをチェックできそうにもなく、気になる記事をオンラインで閲覧し、複写申請。紙の本からの複写は「ただいま50分ほどお時間いただいております」とアナウンスしていたけれど、インターネットからの複写は5分ほどで出てくる。

 半蔵門線と都営新宿線を乗り継ぎ岩本町駅に出て、古本屋さんへ。ネットで検索すると気になる資料があり、来店は予約者のみとあったので電話をかけてみたところ、今日の夕方ならと返事をいただいてやってきた。海洋博関係の資料、ちょっと手が出せない行政的な資料や、会場でスタンプを集めたものまで、あれこれ見せていただく。どうして海洋博に関心をと尋ねられ、素直に答える。このお店はオリンピックや博覧会の資料を専門に扱っているのだという。「夕方以降なら」というのも、市場に行くからというのが理由だったとのこと。今日は金曜日だから、前に取材させてもらった会の日だ。ということは、僕が取材した日にも、この店主の方もきっといらしたのだろう。

 2冊だけ(それでも6600円)購入し、白菜とコーヒー豆を買って団子坂を上がる。今日は冬のコートを羽織って出かけていたので、身体が暖まったのか、アパートを出たときより元気になった気がする。念には念をと、夜はとり野菜みそ鍋で暖まりつつ、晩酌。酒を飲みたいと思えるくらいだから、きっともう大丈夫だろう。鍋を平らげたあと、こんなことでもないと滅多に買わないフルーツ(オレンジ)を切り、知人と分ける。普段の生活で「フルーツが食べたい!」と感じる瞬間はゼロに近い。皆、「食べたい!」と欲する瞬間があるのだろうか。それとも、健康のことを考えて、食べるようにしているのだろうか。あるいは、季節のものとして楽しんでいるのだろうか。

4月15日

 6時過ぎに目を覚ます。コーヒーを淹れて、茹で玉子を作る。午前中は打ち合わせに向けて、メモを書き出す。13時、サッポロ一番塩らーめんに豚こま、もやし、ニラ炒めをのっけたやつを2人前作り、知人と平らげる。13時半にアパートを出て、バスで音羽二丁目へ。大きい部屋しか空いていなくて、仰々しくてすみませんと言われながら会議室に案内していただく。窓の外には、よく歩いたことのある風景が俯瞰できる。14時過ぎから打ち合わせ。小一時間で終わり、部署の方達とも名刺交換。和やかに談笑しながら、これは誰の視点の世界を見ているんだろうかと不思議な感じがする。これは自分以外の誰かの視点だとしか感じられない。

 そのまま帰るにはふわふわした感じがするので、有楽町線東池袋に出て、缶ビールを飲みながら都電沿いを南下する。「古書往来座」を訪ねると、セトさんとのむみちさんがWEB「本の雑誌」の北澤さんの回の感想を伝えてくれる。あの野球選手の話のところがよかったとセトさん。最後に坪内さんが出てくるところも――坪内さんとは書いてないけど――あそこもよかったとのむみちさん。読んでもらえて嬉しい。何冊か本を買って、池袋駅に向かう。「三省堂書店」の書評コーナーを見ると、ぼくが書評した『弱い男』も並んでいる。その隣にあった田中小実昌の文庫を買って、無印良品洗顔用の泡立てネットを買い、千駄木まで引き返す。

 知人とは「伊勢五本店」という酒屋で待ち合わせをしていた。駅を出て路地に入り、坂の上を見上げると知人が待っていたので、坂を駆け上がる。酒屋に入り、手土産にする酒と、自分で飲む酒を選ぶ。奥能登の白菊という酒の瓶が目に留まる。白い菊があしらわれたシブめのラベルで、昔ながらのデザインのようではあるのだけれど、どこか今の感覚も反映されているように見える。隣にはもっとバリっとしたデザインの酒瓶があり、よく見るとそれも同じ酒蔵のものだったので「やはり」と思い、バリっとしたデザインのほうを手土産に、やや古風なほうを自宅用に買って帰る。

 18時過ぎ、近所の肉屋で惣菜(煮込み)とピクルスを買って、一度部屋に戻り、皿を持って再び出かける。「たこ忠」で一杯やりながらテイクアウト用の刺身を作ってもらうつもりでいたけれど、カウンターは満席だ(そうでなくとも、賑やかに飲み会を開催している人たちがいたから、敬遠していた気もするけれど)。ひらめと初がつおの刺し盛りと、かたくりのおひたしを注文し、外で待つ。知人のオンラインミーティングが終わるのを待って、ささやかに祝杯。奥能登の白菊、飲んだ瞬間は「あ、これ、甘ったるいやつかな」と感じるほど、良い香りが広がるのだけれども、甘ったるさが残ることなく消えていく。これはうまいなと漏らすと、「旨みがありながらすっきりした味わい」と、知人はラベルの言葉を読み上げる。なるほどその通りの味だ。テレビを観ながら酒をたらふく飲んだあと、ふとTwitterに目をやると、平民金子さんがYouTubeのURLだけ投稿している。開くと寿司が映し出される。「何がいちばんおいしいか、わかる?」の声に、「エビやろ」とぼくが言うと、隣で知人が「いや、アジやろ」と言う。

4月14日

 6時過ぎに目を覚ます。コーヒーを淹れて、冷凍ごはんをチンして、たまごかけごはんを平らげる。午前中はWEB「H」の原稿を書き進める。今日は雨だが、洗濯物が溜まっているので、洗濯機をまわしてコインランドリーへ。12時過ぎだが、もう小学生たちが下校している。あるひとりの男の子に、教員らしき大人が寄り添って歩いている。一年生だろうか。横断歩道を渡るところまで同行して、きちんと手を挙げて渡るところを見届けて、教員らしき人は学校に引き返していく。乾燥機にかけているあいだ、ノートパソコンを広げて仕事をする。厚手の衣類はまだ乾いていないけれど、パンツなど薄手のものはもう乾いているので、先に取り出しておく。知人の下着も入っているので、泥棒だと勘違いされないかと、いつもそわそわする。

 乾燥を終えてアパートに戻り、14時過ぎ、お昼。サッポロ一番塩らーめんに、豚こまともやしとニラ炒めをのっける。15時半にアパートを出て、国会議事堂前。国会図書館、今は事前申し込みで抽選に当たらないと入館できないけれど、16時以降は予約なしでも入れるというので、その時間めがけて向かうと、行列ができていた。ただし消毒・検温で時間がかかっているだけで、すんなり入館できた。島に関する資料、見つけられるものはすべてさらっておく。あっという間に当日複写の締め切り時刻になり、すべりこみでもろもろ複写する。ドライブインのことを調べているときにもずいぶん資料を探したけれど、自宅にもっとスペースがあれば、『旅』のバックナンバーはすべて揃えておきたいところ。読み返すたびに(つまり自分の関心が少し移ろうたびに)あらたな発見がある。

4月13日

 5時過ぎ、怖い夢で目を覚ます。怖いといっていいのか、友人が創作に苦しんでいる、その気分に触れる夢だった。昨日のシマチョウの脂が胃に残っているのか、もたれた感じがする。換気扇をまわしっぱなしにしておいたキッチンには、まだ焼肉の匂いが残っている。

 まだ企画がどう進展するかはわからないけれど、出版に向けて企画を打診した以上は、あらためて島に行かなければという気持ちが高まる。もちろんぼくが「ルポライター」だということは島の皆さんに伝わっていて(ルポライターという肩書きを名乗ったわけではないけれど、前に滞在したときに『市場界隈』をお渡ししていたので、その肩書きで認識されていた)、この島のことを書きたいと思っている旨は伝えていたけれど、近いうちに書くつもりだということを伝えて、承諾をいただく必要がある。それに、いくつか聞きそびれたこともある。5月に入ってしまうと沖縄に出かける余裕がないかもしれないので、もう、思い切って――と、こないだ泊まった宿に電話をかけ、日曜と月曜にもう一度泊まりにいきたいこととを伝える。ちょうど誰も予約が入ってないし、またゆっくり話しましょうと言ってもらい、すぐに飛行機とレンタカーの手配をする。

 気づけば14時、急いで支度をして部屋を出る。まずは千代田線で綾瀬に向かい、取材したら面白いかもとぼんやり考えていたお店に立ち寄る。立地からしても、お店の感じからしても、これまでの取材とは趣きが異なるものにはなるだろう。でも、「趣き」を求めて取材するのはどうなんだろうと思い悩みながら買い物をして、店をあとにする。近くには公園があり、ポールに貼り紙が出ている。そこには「1年前を思い出そう。」とあり、イラスト屋のイラストが添えられている。「今、私たちができることは?」「トコトンやりきろう!/●外出自粛/●マスク・手洗い・消毒・換気/●三密回避/●テレワーク/●昼夜を問わず/マスク飲食 黙食 個食 静美食」と書かれている。埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県と張り紙の最後に書かれている。なんだかやりきれない気持ちになる。

 千代田線で新御茶ノ水に出て、古書会館で資料をもらったのち、「東京堂書店」と「三省堂書店」をのぞく。なにか書評によさそうな本はないかと探す。S.Kさんの本が新刊台にあり、ビニールで覆われていて立ち読みできないようになっている。タイトルを検索すると、やはり始まったばかりの展覧会と同じタイトルだ。図録だろうかと思いながら購入し、半蔵門線で大手町に出て、16時35分には会議室にたどり着く。本の山を眺めても、これは是が非でも自分が書評をという本は見当たらず、さきほど買った「図録」(正式には図録ではなく、展覧会にあわせて刊行された作品集)だけ回す。ビニールにくるまれていただけあって、繊細な本だから、少しどぎまぎしながら時折行方を追っていると、本の山を積み上げていた委員の方がそれを倒し、「図録」が床に投げ出されているのが視界に入り、思わず席を立ちそうになる。回覧を終えて戻ってきた本は、角が少しよれている。

4月12日

 6時過ぎに目を覚まし、コーヒーを淹れる。朝から相談メールを書く。いま原稿に書きたいと思っていることについて、どういうきっかけでそのことを書き記したいと思ったのか、そこにはどんなポイントがあり、どんな話が出てくるのか、それを描くことで何がツタられるのかを、つらつらと書く。いわゆる企画書としては書けない(書いたことがない)ので、どんなことを書きうるのか、どんなふうに書きたいのかを、ただ書き連ねる。ちゃんと一冊になるところまで漕ぎ着けなければ意味がないので、どういうふうに売り得るのかも、多少書き添える。5000字になったメールを、9時半、編集者のSさんに送信する。どういう反応があるかわからないけれど、もう、当たって砕けろだ。

 昨日も一日寝て過ごしていたとうのに、知人は元気がなさそうな様子で仕事に出かけてゆく。昼はサッポロ一番塩らーめん。豚こまともやし、それにニラを炒めてのっけて平らげる。午後はWEB「H」の原稿を書き継ぐ。夕方、元気のない知人のために、近所の肉屋でハラミ(200グラム)とロース(100グラム)を買っておく。仕事で前暮らしていた街に出かけていた知人には、カルビとホルモンを買ってきてもらうように頼んで、知人の帰宅を待ってキッチン焼肉をする。ハラミとロースは、それなりのお値段だけあってべらぼうにウマイ。知人が買ってきたホルモンはおおぶりなシマチョウで、ホルモンを焼き慣れていないので焼き加減の見極めに苦戦する。

4月11日

 7時過ぎに目を覚まし、朝から“資料”を探す。WEB「H」に向けて取材したテープ起こしをプリントアウトしたもので、そこに原稿の構想も書き込んであった。原稿を書くときは、テープ起こしを2ページが1枚にレイアウトされる状態で出力し、どこでどんな内容が語られているかを見返しながら、あるブロックに赤ペンで印をつけ、「①」と書き、①から繋げるとすればどの内容がいいかと探す。②にふさわしい箇所を見つけると、①と②のブリッジとなる地の文をざっくり思い浮かべて、これもメモしておく。

 こうしてテープ起こしに書き込んだものをもとに原稿を書き始めるのだけれども、その“資料”がどこを探しても見つからないのだ。最後に取り出したのは帰りの飛行機の中で、飛行機を降りるときの記憶ははっきり残っている。あのとき、確実に鞄にしまっている。そのあと、家に到着して荷解きをするときにも、たしかに見た記憶がある。なのに、部屋のどこを探しても見当たらない。探しているうちにお昼になってしまう。

 正午近くになって荷物が届く。ネットで注文した、アイリスオーヤマの、深いタイプのフライパン。さっそく開封し、知人に鯖缶とトマト缶のパスタを作ってもらう。ビールを1本と、3リットルの箱ワインから赤ワインをグラスに注いで2杯飲んだ。気持ちを切り替えて、もう一度テープ起こしを出力して、原稿を考え始める。友人のA.Iさんが応援しているソダシが桜花賞に出るので、15時40分、レースだけ観る。最近は前哨戦を叩かずにいきなりGIに出走するケースが増えているのだなあ。白さよりも、鼻のうっすらピンク色が目につく。19時に仕事を切り上げて、焼き餃子とラフテーの残りで晩酌。