5月6日

 深夜1時過ぎに目を覚ます。昨晩は早々に眠ってしまったなと反省する。ただ、この時間に起きてしまうと生活リズムが狂ってしまうので、どうにかもういちど眠りにつく。6時に目を覚まし、フリーペーパーの原稿を書く。昼は米を炊き、レトルトカレーを平らげる。普段はレトルトカレーとなると、近所の八百屋で売っている中村屋のカレーを買ってくるのだけれど、今日は八百屋が休みだったのと、節約したいこともありセブンの98円カレーを買ってきてお昼にする。

 昼過ぎには原稿がほぼ完成する。ちょうどそのタイミングでY新聞のM記者からメールが届き、沖縄をテーマにした記事を書いているところで、その終わりに橋本さんのコメントを電話取材で伺えないかと書かれてある。M記者は『ドライブイン探訪』を出版したときにインタビューしてくださって、おそらくそこから読書委員に推してくださったのだと思う。メールに書き添えられていた記事の方向性を鑑みて、自分に話せることがあるとしたらどういうことがあるだろうかとしばらく考えて、最初に思い浮かんだことをある程度メールで返信する。電話だとうまく話す自信がなかったので、この文面を適宜編集して使っていただいても構いませんし、いつお電話いただいても構いませんのでと書き添えておく。

 メールを送って一息ついていると、ふと、カメラのセンサーにゴミがついてしまっていたことを思い出す。なんどブロワーをかけても取り除けなかったので、新宿のニコンプラザでクリーニングしてもらう必要がある。月曜から稽古が始まって、夏が終わるまでカメラを使い倒すことになるので、その前にクリーニングしておきたい。明日は土曜日で多少混雑するだろうから、今日のうちにと、急遽新宿に出かける。山手線に揺られていると、さっそくM記者から返信があり、いただいたメールをもとに記事にさせていただきます、とありホッとする(「いつお電話いただいても」と返信しておきながら、突然思い立って出かけてしまったので、電車に乗っているタイミングで電話があったらどうしようと少しそわそわしていた)。

 15時にニコンプラザに到着してみると、メンテナンスサービスは事前予約制だと貼り紙が出ている。ただ、空きがあるということで、今回は受け付けてもらえることになってホッとする。カメラを預け、今日から展示が始まっていた北島敬三さんの写真展を観たのち、山手線で池袋へ。「古書往来座」に行き、のむみちさんとしばらく近況を話したあと、買い取ってもらった本の代金を受け取り、棚を眺める。詩集や詩人のエッセイをいくつか。17時過ぎに新宿に引き返し、カメラを受け取って帰途につく。

 家に帰ってみると、ネットで注文したものがあれこれ届いている。重めの梱包を開封してみると、チューリップのポークランチョンミート12缶セットだ。稽古場に通うあいだ、節約するためにもお弁当を用意していくつもりで、なるべく簡素なお弁当は何かと考えていた。『Light house』でも、『水納島再訪』から達也さんのポーク玉子入りお弁当の思い出話をピックアップしてもらったこともあるし、食材を買い置きできる上に手間も掛からなそうだからと、通販でポーク缶を購入しておいた。夜は知人とキッチン焼肉をしながら、『相席食堂』のM-1ファイナリスト回を楽しく観る。キッチン焼肉するときはいつもこの番組を動画配信で観ている。

5月5日

 フリーペーパー「M」に向けて、テープ起こしをする。沖縄のことを考えているせいか、舞台『c』にのツアースケジュールと、それに合わせて自分はどういう移動をするか、考え始めてしまう。せっかく同行するのであれば、前乗りするなり延泊するなりして、なにか別の取材もくっつけたくなる。いつか実現したいとあたためている企画は3個くらいあって、そのうちの1個がうってつけだなと考えて、取材で出かけたらちょうどよさそうな場所を地図で探す。5月から7月はかなり仕事を絞ることになるので、収入がかなり落ち込むことになるので、エクセルで経費を計算して、実現の可能性を練る。

 テープ起こしが済んだところで、今度は本棚が気になり始める。これから始まる稽古や、これから考えたいテーマに分けて、本棚を整理しておきたい。しばらく読まないであろう本もちらほら本棚に挿してある。本棚から半分くらい本を抜き、テーマ別に並べ替えて、段ボール2箱分は買い取ってもらうことにして、セトさんにLINEで相談したのち、宅急便で発送する手続きをしておく。

 14時45分、知人と近所を散歩する。知人は買ったばかりだというピンク色の服を着ている。もしかしてツツジの色に合わせたんと尋ねると、嬉しそうな顔をする。根津神社には参拝客が行列を作っている。ただ、ツツジまつりはもう期間が終わっていたらしく、ツツジもわりと散り、緑が目立つ。15時の開店と同時にバー「H」へ。マスターのHさんの髪が少し伸びていて驚く(それぐらいご無沙汰してしまっている)。バイボールを2杯飲んだあと、「その髪型、かっこいいっすね」と知人がHさんに声をかけていて、この人、すごいな、、と思う。僕はそういう感想(?)が浮かんだとしても、伝えることができない。

 帰りに「往来堂書店」に立ち寄ると、節約生活を誓ったばかりなのに、ほろ酔い加減だからかたくさん買ってしまう。改築工事が終わったようだと知人から聞いていたので、やなか銀座まで足を伸ばし、「E本店」に行ってみると、おしゃれな内装に生まれ変わっている。軒先だけでなく、店内にも角打ちスペースができていて、こんなに広かったっけと意外な感じがする。大盛況なのでビールを1杯だけ飲んで、惣菜屋さんでアジフライなど惣菜を買う。よみせ通りのスーパーに寄ってみると、冷凍食品の和惣菜セットを発見し、5袋買い求める。家に帰ってすぐ晩酌を始めて、20時には眠ってしまう。

5月4日

 朝から文庫のあとがきを書く。あとがきと言いつつ、途中から取材記事になるので、テープ起こしから全体的な構成を練り、ちびちび書き進めていく。昼過ぎには終わり、ゲラを見返して、赤字を入れる。基本的には「――」が行の頭や終わりにきてしまっているところを修正する程度で、あとは編集者からの疑問点に返答するくらいにとどめる。今日は昨日に続いて天気が良く、お散歩に行きたいと知人が言うので、16時半に散歩に出る。本駒込から南北線飯田橋に出て、総武線に乗り換える。思ったより混んでいる。高円寺に出て、南に伸びるアーケード街をぶらつく。かつて高円寺に暮らしていた知人は、お店の並びを眺めながら「めちゃくちゃ入れ替わってる」と何度も言う。18時少し前に「コクテイル書房」にたどり着くと、表の看板は「CLOSE」になったままだが、カウンターにはもう飲んでいるお客さんがいる。テーブル席に案内され、知人とハートランドで乾杯。知人とお店に入って飲むのはずいぶん久しぶりだという感じがする(ここなら座席の配置もゆったりしている)。2杯ほどビールを飲んだあと、「お店じゃないと飲めないものを」と、知人はホッピーを注文する。僕もホッピーを1セット相当飲み、朔太郎カレーを食べて帰途につく。

5月3日

 朝から『G/J』の原稿を書く。沖縄をテーマにと言われて、なにか書けることがあるだろうかと思いながら引き受けたものの、編集者の方が僕の著書を読み返してくれた上で、「食べものや飲みものが本当に美味しそうに描写されている」というところから、飲食店や食べ物をテーマで書いてもらえないかとアイディアを投げてくださって、そのおかげでするする書くことができた。沖縄をテーマに、と依頼があると、どうしても身構えてしまうところがある。テレビでは「不明女児の母『美咲のものではないと信じている』」と、速報のテロップとともにボードを出している。来週から始まる稽古に向けて、必要になりそうなこまごましたものを通販で注文する。仕事帰りの知人にスーパーに寄ってもらって、冷凍食品コーナーを見てもらう。ネットで検索すると、きんぴらごぼうみたいな和惣菜が小分けになったもの(弁当にちょっと追加できるもの)が販売されているようだけれども、駅近くのスーパーにはそもそもお弁当のおかずになるような冷凍食品は並んでいないらしかった。

5月2日

 インタビューに向けて質問リストを考えているうちに昼過ぎだ。時間がなくなり、タクシーで池袋へ。なかなかつかまらず、本駒込まで出てようやく広い、タクシーに乗りながら手書きでメモしていた質問リストをタイプする。14時過ぎに到着し、1時間半ほどインタビューを収録。せっかくだから「古書往来座」にと思ったものの、あれ、月曜日は定休日か。とりあえず行ってみるかと思ったけれど、雨雲レーダーをみると1時間後には雨が降り始めそうだ。洗濯物を干しっぱなしだから、まっすぐ駅に向かい、地下街で松前漬けなどツマミを買って帰る。帰りに「I本店」に寄り、日本酒を4本選んで買う。「今回も渋いですね」と言われて、平然を装って会計を済ませたものの、ほくほくしている。いつも日高見や栗駒山を選んでいるからだろう。

5月1日

 6時過ぎに目を覚ます。昨日のトークイベントで心配していたのは、昼間から飲んでしまうと途中で酔っ払ってしまうのではないかということと、しばらく誰とも話さずに過ごしていたところから、いきなり10時間もトークをするとなると、声が枯れてしまうのではないかということだった。蓋を開けてみると、特に酔っ払うこともなく最後まで話せたし、30分に1個くらいのペースで龍角散ののど飴を舐めていたおかげで、朝になってみても喉にはさほど違和感はなかった。宿泊しているゲストハウス――泊まっているのは個室だけど、シャワーとトイレは共同――のシャワールームの様子を伺い、誰ともすれ違わずに済みそうなタイミングを見計らってシャワーを浴びる。やっぱり、そのあたりで神経を使うことになるし、様子を伺って過ごす時間をロスしてしまうから、今度からはバス・トイレつきの部屋を選んでしまう気がする。

 荷物を残したまま宿を出て、灘駅を越える。日曜日だというのに制服姿のこどもたちが改札から出てくる。9時過ぎ、久しぶりで「栄食堂」へ。わりと空いている。ショーケースから岩のりと菜葉の漬物、それに目玉焼きを手に取り、カウンターに座って豆腐の肉吸いと中ライスを注文。テレビでは『サンデーモーニング』が放送されていて、佐々木朗希に審判が詰め寄る場面が流れている。あとから隣にやってきたおっちゃんが、店員さんを呼び、さりげなく僕のほうを指しながら、あのスープ何?と尋ねている。おっちゃんは肉吸いは頼まず、味噌汁を頼んでいた。会計してみると990円、朝から豪遊してしまった。

 今日は13時の飛行機に乗る予定だ。ただ、12時には空港に着いておきたいとなると、午前中にどこかに出かける、というほどの時間はなさそうだ。どうしようかと思いながら宿に引き返していると、そうだ、王子動物園があるじゃないかと思い出す。雨の降る中、傘を差しながら動物園に向かってみる。遊園地のエリアはほとんどの乗り物が運転を中止していて、閑散としている。観覧車だけは動いていて、久しぶりに乗ってみようかとも思ったが、ひとりだと時間を持て余してしまいそうだ。雨が降っているせいだろうか、ずっと飼育舎の扉に向かって立ち尽くしているゾウをしばらく眺めて、動物園をあとにする。

 10時半に宿をチェックアウトして、のんびり空港へ。早々に荷物を預けて手続きを済ませ、コーヒーを買ってデッキに出て、『G/J』から依頼されていたエッセイを書き始める。あたりにいるのは、離着陸する飛行機を見学するこどもたちと、それを見守る保護者たちで、パソコンを広げている人は見当たらない。今月からはしばらく節約生活になるので、空弁は買わず、コンビニでおにぎりセットを買って保安検査場を通過する。飛行機に搭乗してみると、自分の座席に赤ん坊が座っている。えっ、と航空券を見返していると、隣に座っていた女性が赤ん坊を抱きかかえて立ち上がったので、窓側の座席に座り、引き続き原稿を練る。

 羽田空港に到着して、品川経由で新宿へ。15時半に「LUMINE 0」に到着する。スーツケースがあるので、受付で預かってもらって、そのままロビーの椅子に座らせてもらって、開演時刻を待つ。平民さんが昨日のトークイベントを振り返った話をnoteに書かれていて、そこにこう記されていたことを思い出す。

私は今日「わからないものには触れない」ていう姿勢で通したけど(「わかる」てなんや、ていう問題はとりあえず置いといて)橋本さんにとって大きな存在のひとつがマームとジプシーで、ここが自分は現時点でまったくわかっていない(ひつこいけど「わかる」てなんや、ていう問題はとりあえず置いといて)。こればかりは付け焼き刃の知識で何か言う話でもないから、結局この部分の話は何も……できない……。

橋本倫史と平民金子がぽつぽつ語る会|平民金子|note

 今年の夏に上演される作品を観たらどんな感想を抱くだろうかと想像するが、関西圏で上演されるのは京都だ。大阪なら1時間だけど、京都となるとちょっと遠いかもしれない。ぼんやりしているうちに開場時刻が近づき、お客さんがぽつぽつ増える。受付でチケットをもらうと、整理番号は1番だ。普段は最後列でしか観ないけれど、それならばと思い立ち、最前列で観る。やはり最前列だとまるで印象が違っている。

4月9日

 9時過ぎ、県庁前からゆいレールに乗り、壺川へ。急遽レンタカーの手配をしたものの、いつも利用している格安のレンタカー会社は那覇空港店にしか手配できる車がなく、そこまでタクシーで行くと1500円以上かかってしまうのと、早い時間だと空港からの送迎がない(のと、レンタカーの送迎はぎゅうぎゅうに押し込まれるので避けたい)のとで、比較的近くになる壺川駅でタクシーを拾って、レンタカー会社に行き、車を借り受ける。ダッシュボードを開けると、前の利用客の書類が残ったままになっている。ここの会社は、前の客のゴミが残っていたこともあって、ちゃんと清掃作業が行われているのか不安になる。

 運転中に手が触れる部分は除菌シートで拭いて、車を走らせる。まずは南風原文化センターに行き、「27度線をこえて 『復帰』をめぐる人々の足跡をたどる」という展示を観る。Uさんのお店にポスターが貼られてあって、「27 度線」という境界線を自分が意識したことがなかったこともあり、観にくることにした。わずか半月ほどの展示。27度線というのは、辺戸岬と与論島のあいだにあり、そこから南が切り離されたことを指し示す(もちろんその歴史は知っているけど、「27度線」という言葉を知らなかった)。復帰を求めて、洋上で抗議活動をおこなったり、全国を歩いて復帰を求める行動をおこなっていた人たちの姿が、そこに記録されている。

 展示を観たあとは、だだだっと北上し、13時のフェリーで水納島に渡るつもりでいた。ただ、Uさんから連絡があり、雑誌に掲載する写真が必要になったので、よかったらお店の写真を撮ってもらえないかと嬉しい連絡をもらったので、11時の開店時刻にあわせて市場界隈に向かう。むつみ橋交差点で信号を待っていると、男性にずっと頭を下げている女性の姿が目に留まる。なにかトラブルかなと一瞬思ったが――よく見ると男性は、女性の頭の上に手をかざしている。ああ、これか! 自分で目にするのは初めてだ!と少し感動する。手をかざし終えると、男性はしばらく言葉を交わし、次のターゲットを探している。見ていると、女性にしか声をかけていないことにも気づかされる。数人に断られたあと、その男性は若い二人組に声をかけている。いやーさすがに二人組は無理だろと思いながら眺めていると、二人組がベンチに腰掛けていたので驚く。

 浮島通り沿いの駐車場に車をとめて、カメラを提げて市場中央通りを歩く。どんな感じがよいか、何点ぐらい必要かを確認して、お客さんの顔を写さずに済むタイミングを待ち構えながら、写真を撮る。お客さんが増えたタイミングで、いちどUさんのお店を離れ、自分のWEB「R」の連載で必要になりそうな写真も押さえておく。高速道路をひた走り、15時半に本部町へ。町営市場でジンジャーエールをテイクアウトして、少し立ち話をしていると、「うちの父が『水納島再訪』を読んで、絶賛してました」と嬉しい声を聴く。実はこないだも、仲地さんから連絡があって――と話すと、「それが父です」と言われて驚く。

 16時のフェリーで水納島へ。最終便とあって、乗客は3名だけだ。フェリーが通ったあとにできる波飛沫に光が反射して、うっすら虹が出ている。祥さんが運転する車で宿に向かうと、若い子がふたり、出荷作業の手伝いをしている。ひとりは親戚の子で、ひとりは遊びにきている子だという。例年だとパーラーの手伝いをしているけれど、今年は海開きが遅れていて、農作業の手伝いをしているのだと祥さんが教えてくれた。

 まずは散歩に出かける。与那国で新人の先生がお出迎えされていたことを思い出す。ここにも学校があり、校長先生のための住居があり、教員宿舎もある。花壇も綺麗に手入れされてあるけれど、ここには今年も先生が赴任してくることはなかった。去年はこの時期にはもう営業していたパーラーは、営業している気配はなく、草が伸びたままだ。島をぐるりと一周したあと、ビールを飲んだ。仲地さんも達也さんも不在なので、夜は祥さんとふたりきりで話しながら、与那国で買ったものの未開封のままになっていたどなんを一緒に飲んだ。ここで祥さんが語っていた言葉はとても印象深いものだったから、いずれ原稿に書く。

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