5月1日

 6時過ぎに目を覚ます。昨日のトークイベントで心配していたのは、昼間から飲んでしまうと途中で酔っ払ってしまうのではないかということと、しばらく誰とも話さずに過ごしていたところから、いきなり10時間もトークをするとなると、声が枯れてしまうのではないかということだった。蓋を開けてみると、特に酔っ払うこともなく最後まで話せたし、30分に1個くらいのペースで龍角散ののど飴を舐めていたおかげで、朝になってみても喉にはさほど違和感はなかった。宿泊しているゲストハウス――泊まっているのは個室だけど、シャワーとトイレは共同――のシャワールームの様子を伺い、誰ともすれ違わずに済みそうなタイミングを見計らってシャワーを浴びる。やっぱり、そのあたりで神経を使うことになるし、様子を伺って過ごす時間をロスしてしまうから、今度からはバス・トイレつきの部屋を選んでしまう気がする。

 荷物を残したまま宿を出て、灘駅を越える。日曜日だというのに制服姿のこどもたちが改札から出てくる。9時過ぎ、久しぶりで「栄食堂」へ。わりと空いている。ショーケースから岩のりと菜葉の漬物、それに目玉焼きを手に取り、カウンターに座って豆腐の肉吸いと中ライスを注文。テレビでは『サンデーモーニング』が放送されていて、佐々木朗希に審判が詰め寄る場面が流れている。あとから隣にやってきたおっちゃんが、店員さんを呼び、さりげなく僕のほうを指しながら、あのスープ何?と尋ねている。おっちゃんは肉吸いは頼まず、味噌汁を頼んでいた。会計してみると990円、朝から豪遊してしまった。

 今日は13時の飛行機に乗る予定だ。ただ、12時には空港に着いておきたいとなると、午前中にどこかに出かける、というほどの時間はなさそうだ。どうしようかと思いながら宿に引き返していると、そうだ、王子動物園があるじゃないかと思い出す。雨の降る中、傘を差しながら動物園に向かってみる。遊園地のエリアはほとんどの乗り物が運転を中止していて、閑散としている。観覧車だけは動いていて、久しぶりに乗ってみようかとも思ったが、ひとりだと時間を持て余してしまいそうだ。雨が降っているせいだろうか、ずっと飼育舎の扉に向かって立ち尽くしているゾウをしばらく眺めて、動物園をあとにする。

 10時半に宿をチェックアウトして、のんびり空港へ。早々に荷物を預けて手続きを済ませ、コーヒーを買ってデッキに出て、『G/J』から依頼されていたエッセイを書き始める。あたりにいるのは、離着陸する飛行機を見学するこどもたちと、それを見守る保護者たちで、パソコンを広げている人は見当たらない。今月からはしばらく節約生活になるので、空弁は買わず、コンビニでおにぎりセットを買って保安検査場を通過する。飛行機に搭乗してみると、自分の座席に赤ん坊が座っている。えっ、と航空券を見返していると、隣に座っていた女性が赤ん坊を抱きかかえて立ち上がったので、窓側の座席に座り、引き続き原稿を練る。

 羽田空港に到着して、品川経由で新宿へ。15時半に「LUMINE 0」に到着する。スーツケースがあるので、受付で預かってもらって、そのままロビーの椅子に座らせてもらって、開演時刻を待つ。平民さんが昨日のトークイベントを振り返った話をnoteに書かれていて、そこにこう記されていたことを思い出す。

私は今日「わからないものには触れない」ていう姿勢で通したけど(「わかる」てなんや、ていう問題はとりあえず置いといて)橋本さんにとって大きな存在のひとつがマームとジプシーで、ここが自分は現時点でまったくわかっていない(ひつこいけど「わかる」てなんや、ていう問題はとりあえず置いといて)。こればかりは付け焼き刃の知識で何か言う話でもないから、結局この部分の話は何も……できない……。

橋本倫史と平民金子がぽつぽつ語る会|平民金子|note

 今年の夏に上演される作品を観たらどんな感想を抱くだろうかと想像するが、関西圏で上演されるのは京都だ。大阪なら1時間だけど、京都となるとちょっと遠いかもしれない。ぼんやりしているうちに開場時刻が近づき、お客さんがぽつぽつ増える。受付でチケットをもらうと、整理番号は1番だ。普段は最後列でしか観ないけれど、それならばと思い立ち、最前列で観る。やはり最前列だとまるで印象が違っている。