昨晩飲み過ぎたせいか、ぐったりしている。知人が観劇に出かけたあとも、ずっと布団に寝そべっていた。「王様のブランチ」に坂上忍が出ている。オープニングのやりとりで、坂上忍は早々に「結構ベテランなんじゃない?」とリポーターの鈴木あきえにつっこんでいる。たしかに、鈴木あきえの進行は本当に達者だ。毎週観ていて心地よい気持ちになる。

 その姿に多少元気を取り戻して、缶ビールを飲みつつ『あばよダチ公』を観始める。松田優作の初主演映画だ。「政治」を「性事」と勘違いするくだりをしばらく続けたり、街頭演説する女性に絡んだり、最後に立てこもるシーンなんかを観ていると、70年代の空気はこんな感じだったのかなあとボンヤリ思う。最後にはクレーンでバリケードを突破される立てこもりというのは当然あさま山荘を想起させるけれど、主人公たちは政治的な信条で立てこもっているのではなく、一度の人生だから「狂ってみよう」と決心し、ダム工事反対運動を行うのだが、その理由は「反対運動を行って補償金をふんだくる」ことが目的だ。その軽さが70年代なのかなあということは思い浮かんだけれど、さほど熱狂して観ることはできなかった。もっと若い時に観ていれば、松田優作の姿に熱狂できただろうか。

 19時、知人と一緒に六本木に出かける。駅から歩いているあいだ、僕はずっと何かしゃべっていて、「どうしたの、何で今日はそんなにテンション高いの」と言われて、そのことに気づく。六本木なんてそんなにこない場所だから、緊張しているのだろうか。19時半にスーパーデラックスにたどり着き、ドリンクチケットをビールに交換して開演のときを待つ。いろんな人が挨拶を交わしている。僕はサロンのような雰囲気に昔から馴染めないでいる。30過ぎにもなって相変わらずそんな気持ちでいる自分もみっともないとは思うけれど、ついムッとした表情になる。隣にいる知人は「知り合いたくさんいるんだから、やめてよ」と迷惑そうだ。

 ほどなくして空間現代の演奏が始まった。ライブを観るのは久しぶりだけれど、前とは違う音が鳴り始めていて、僕はどんどん前のめりになる。ゴツゴツした音の中に、ファニーな音も聴こえる。日曜日の真昼間に、酒をかっくらってふらついているおっさんのような、ファニーさ。とても好みだ。あまりお金を使わないようにしようと心に込めていたのに、1時間ほどの演奏のあいだにビールを1杯、ハイボールを2杯、ロックを1杯飲んでしまった。もう一組のコアオブベルズは、僕はそんなに観たことがないのであまり語ることはできないけれど、今回の大人数での編成は、結果として美しくまとまっていた。ただ、その美しくまとまっているということが彼らの本領なのかどうか、僕にはわからないけれど。

 終演後は知人とふたり、近くにある中華料理屋「エイト」に行き、水餃子を食べた。最近はずっと、自分が書き進めている個人的な仕事のことでモヤモヤした気持ちになっているので、ライブを観に出かけても楽しめないんじゃないかと思っていたけれど、結果的にはとても楽しい夜だった。