9月7日

 9時半まで眠ってしまう。昨晩はビールを2本とチューハイを3杯、ハイボールを1杯飲んだ程度だというのに、妙にぐったりしている。もちろん医者が提唱するアルコールの適量はこれでも超えているのはわかっているけれど、このぐらいで翌日に響くことはなかった。すぐには起き上がれないままケータイをぽちぽち触っていると、宮崎県椎葉村で土砂崩れが起きて4人が行方不明だと書かれている。Google マップを起動し、「椎葉村」で検索して、航空写真に切り替えてしばらく眺めていた。冷凍ごはんを解凍し、今日も納豆をのっけて平らげる。

 今日は雨の予報だったけれど、外はすっかり晴れている。でも、「今日は騙されないぞ」と、洗濯機をまわすのを我慢する。昼前に知人が買い物に出かけ、ソース焼きそばを作ってくれる。自分が作るときよりも、やっぱり肉が美味しく仕上がっている。不思議に思いながら食べていると、バババババと音が響き始める。どうやら雨が降り始めたらしかった。ものすごい音を響かせながら降り始めたかと思うと、すぐに上がり、少しだけ青空も覗いている。妙な天気だ。午後、アイスコーヒーを飲みながら、ようやく企画「R」の原稿を書き始める。19時頃まで書き続け、5565字に至ったところで今日は中断(こうして数字にすると、ずいぶん書いたように錯覚するけれど、2000字は引用だ)。

 知人は本を読んでいる。お願いして図書館で借りてきてもらったうちの1冊だ。『E』誌から原稿依頼を受け、ある作家の小説を読み返そうと思ったのだが本棚には見当たらず、取り急ぎ図書館で借りてきてもらったのだ(普段ならネットで注文するところだけれど、その作家の本を新刊で買い直すと、原稿依頼に書かれていた謝礼の額をあっという間に超えてしまいそうなので、何冊かは買い直し、あとは借りることにしてしまった)。そんな知人に「キングオブコントの決勝メンバーが決まったで」と報せにゆくも、知人は虚ろにこたえるばかり。個人的にはラジオを聴いている空気階段を応援したいところではあるけれど、実力派揃いだ。GAGは、ジャルジャルは、ニューヨークはどんなネタで挑むのだろう。

 今日の晩ご飯は「ピザでいい」と知人は言っていたけれど、本当にピザでいいのかと念を押し、ピザーラのサイトを開く。先日の『ジョブチューン』で高評価だった味が盛り合わせになったピザが食べたいけれど、そんな都合の良いメニューは存在しなかった。ぼくが食べたいと思っていたのは、ピザーラ従業員イチ押しランキング2位の「プルコギ」と、1位の「大海老のガーリックシュリンプ」だ。でも、この2つの味が1枚におさめられたピザも存在せず、それならば大海老のガーリックシュリンプが含まれるクォーターを注文しようかと思っていると、「でも、せっかくだったら『全員合格』になったピザが食べてみたい」と知人が言う。あの番組で審査員となったピザ職人たちは、プルコギには全員が「合格」の札を挙げたのに対し、大海老のガーリックシュリンプにはひとりだけ「不合格」を挙げた職人もいたのだ。結局、スパイシープルコギ、スパイシーソーセージ、旨辛ペパロニラバー、旨辛フレッシュトマト&バジルが1枚におさまった「旨辛スパイシークォーター」を注文する。今は2020年だというのに、まんまとテレビの思惑通りに過ごしている。40分ほどでピザが届き、さっそく食べる。プルコギは確かにうまかった。これなら全員「合格」と挙げるだろうなと納得する。それはもはや別ジャンルのピザだからだ。本場で修行したピザ職人だろうと、焼肉屋でカルビを口にしたときに「これはイタリアの味じゃない」とケチをつけないはずで、だとすればピザーラのプルコギに「不合格」と挙げる人はいないだろう。

 ピザを食べながら『いだてん』を観始める。今日はビールは飲まず、ピザと一緒に注文したコカコーラ・ゼロを飲んで、あとはお茶を飲みながら『いだてん』15話まで観た。唐沢寿明が日本の戦後を背負ったような役をやることが多いように、綾瀬はるかは日本の近代の女性を背負わされたような役が多い気がする。いろんな言葉を飲み込んだような顔に圧倒される。23時過ぎには布団を敷いて、知人に借りてきてもらった本を読んだ。図書館の本だというのに、香水の匂いがする。これはきっとポプリの香りだ。こうして小説を読んでいると、友人と話したくなる。しばらく前であればA.Iさんとよく小説の感想を話していたなと、妙に懐かしく思い出す。