9月8日

 8時に目を覚ます。昨日は酒を飲まなかったので体が軽い気がする。10時にセブンイレブンに出かけ、ハムサンドを買ってきて平らげる。アパートの向かいにある小さな広場で、空き缶の選別をしている男性がいた。麦わら帽子に白いTシャツ姿だ。今日は陽射しも鋭く、夏が戻ってきたみたいだ。Tシャツの白さに目を惹かれる。溜まっていた洗濯物を洗い、ベランダに干しに出るとすごい風だ。陽射しと風とであっという間に乾き、洗濯機をもうひとまわし。12時過ぎ、ハムサンドと一緒に買っておいた銀座デリー監修ホットスパイシーチキンカレーを温めて食べる。

 お昼を食べながら、昨晩放送された『月曜からよふかし』を再生する。沖縄で居酒屋を経営する、この番組ではおなじみの「嫁ニー」が登場する。最近この番組を観ていなかったけれど、恩納村に居酒屋の2号店を出店したものの、すぐさま閉店を余儀なくされたという。あのあたりはリゾート地だろうから、今はかなり厳しいのだろう。ただし、それにめげずに、今度は国際通りのれん街に居酒屋を出店する様子を番組は追う。のれん街は昨年末、三越の跡地にオープンした(一部のエリアはレトロ風に装飾された)飲食店街で、「那覇市場」と看板を掲げているのが目に留まり、「国際通りを挟んだ向こう側に戦後からの市場が広がっているのに、大胆なネーミングだな」と感じていた場所だ。あそこに出店したのか――ということは、あの場所にもう空き店舗が出ているのか。

 午後、企画「R」の原稿を書き継ぐ。数行書いては立ち止まり、メモを読み返し、本を開き、また書いてと繰り返していたせいで、あまり捗った感じはなかったけれど、それでも日が暮れる頃には9500字近くになる。来週15日からの旅に備えて、必要なものを準備し始めたり、『AMKR手帖』の原稿の構想をぼんやり練ったり。今日も休肝日にしようか迷ったけれど、酒を断つつもりがあるわけでもないのだからと、缶ビールを開ける。仕事帰りの知人が買ってきてくれた惣菜(中華風酢の物とぼんじり焼き)と枝豆をツマミに、20時から晩酌を始める。

 先日WOWOWで放送された『麻雀放浪記2020』を再生する。内容を知らずに録画しておいたのだけれど、タイトルに「2020」とついているように、原作にある太平洋戦争後の世界を舞台とするのではなく、「哲」が2020年にタイムスリップしたという設定の映画だった。再生し始めてしまったので、最後まで観る。2020年のオリンピックは戦争で中止となり、監視社会となってしまった日本が描かれているのだけれども、この手触りで現実の社会に警鐘をならす手つきは、今ではもう観ていてしんどくなる。映画自体は「あほだなあ」と思いながら最後まで観たけれど、過去の映画の引用で構成されている感じがしんどく(「オリジナルの時代は終焉し、これから先の時代は複製と引用によって構成される」というメッセージなのだとしても、それはそれでしんどい)、観終わるとハードディスクから削除する。

 ところで、この映画には浅草の風景が登場する。冒頭のシーンで「あ!」と一時停止ボタンを押し、「これ、『水口』の入り口やろ」と言う。一時停止を解除し、カットが切り替わると、やはりそこは浅草だった。隣で観ていた知人は、「ほんまにロケ地探すの好きよね」と言う。テレビ画面に街の風景が映し出されると、ぼくはすぐに「これ、どこやろ?」と口に出してしまう。この映画の中で、登場人物がVRのゴーグルをつけてお互いに好きな世界に視覚で浸りながらセックスをするシーンがある。その次のシーンで、横丁のような場所を歩く場面が映し出される。今度の日曜日は大阪城音楽堂でライブがあって、日帰りしようかとも考えていたけれど、やっぱり、せっかく移動するのであれば、別に飲みに行ける店がなくたって風景を目にしておかなければと思い直し、「日曜日、やっぱ泊まりにしようかな」とつぶやく。あまりにもつぶやいたタイミングが悪く、なんや、女かと知人が言うので吹き出してしまう。

 続けて、BS朝日で再放送が始まった『南くんの恋人』を再生する。いきなりドラマの本編から始まるのではなく、まずはCMが流れるのだけれども、奈美悦子とアナウンサーが画面に登場し、「ぐっすりずむ」というサプリメントが紹介される。BSはシニア層向けのCMが多いにしても、『南くんの恋人』というドラマにはあまりにも似つかわしくなくてギョッとする。このドラマは観たことがないけれど、坪内さんがポジティブに語っていたことを思い出し、録画したのだ。ヒロインを演じるのは高橋由美子で、ぼくがこの女優を初めて観たのは『ショムニ』だったから、あまり「ヒロイン」というイメージがなく、その点は印象的だったけれど、26年前のドラマはさすがに観ていて気恥ずかしくなり、途中から立ち上がって観た。そのうちに腹が減り、素のサッポロ一番塩らーめんを作り、知人と啜って眠りにつく。