1月4日

 6時に目を覚ます。可燃ゴミを出しに行くと、最寄りの収集所にはあまりゴミが出ていなかった。このあたりは自宅でおせちを作って重箱に詰める人が多いから、正月明けでもゴミが少ない――ということだろうか。ストレッチをして、7時過ぎにジョギングに出る。出勤してくるスーツ姿の人たちとすれ違う。根津に向かって坂を下ると、大きなマンションが多いこともあってゴミ袋がたくさん出されている。おせちの紙箱。冷凍食品の袋。松屋のロゴ。いろんなお正月の跡が並んでいる。不忍池まで走って引き返す。

 シャワーを浴びて、ラジオを聴きながら日記を書く。聴いているラジオがリアルタイムに追いつきつつあるので、聴く番組を増やしてみる。『ラランド・ツキの兎』(12月29日放送回)を聴いていると、12月13日はサーヤの誕生日で、誕生日会をやった話をしている。その流れで、「車で移動中に、スマホと繋いでカラオケができるマイクで歌をうたった」という話があり、ぎょっとする。もしかしたら誰か友人が運転する車だったのかもしれないけれど、もしタクシーだとすれば、運転手は気が気ではなかっただろう。もしコロナがなかったとしても、移動しながらそんなことして過ごすのかと、大きな壁を感じる。

 日記、事細かに書きたくなってしまうので、時間を限って書くことにした。30分ほどで書き終えると、WEB「H」の連載で取材したいお店に依頼状を書く。担当のTさんに依頼状をメールで送ったあと、自転車で駒込警察署に向かう。運転免許の更新期限は今日までなのだけれども、今は狭い部屋で講習を受ける気になれないので、更新期限延長手続きをする(コロナの影響なのか、延長できるようになっていた)。免許証には有効期限が「平成33年1月3日まで」と記されているけれど、3日は更新センターが営業していないため、更新通知のはがきには「1月4日までに更新手続きをするように」と書かれている。期限ギリギリになってしまったので、延長手続きができなかったらどうしようと少し不安だったけれど、滞りなく手続きを終える。警察署には人がまばらで、ぼくと同じ手続きをしている人がふたりいるだけだ。

 帰り際、警察署のすぐ近くにあるBOOKS「A」に立ち寄る。挨拶を交わしたあとに、「緊急事態宣言と縁がある男」とOさんが言う。ウェブでの公開は見送られたけれど、今年の3月末に「A」を取材させてもらっていて、取材最終日には小池百合子が緊急記者会見を開いていたのだ。3冊ほど買って帰宅して、知人が作ってくれた鯖缶とトマト缶のパスタを平らげる。テレビで『千鳥vsかまいたち』を観ながら、ビールを2本飲んだ。「まだお正月気分が抜けとらんのう」と知人が言う。パスタを食べ終えても物足りず、いかの塩辛とコップ1杯の酒も追加する。

 テレビを眺めながら、世の中には犬の情報が溢れとるのう、と知人がつぶやく。酒を飲み終えると、読書委員会で検討したい本についてメールを送っておく。コーヒーを淹れて、テープ起こしに取りかかる。昨年末に取材した、WEB「H」の連載の音源。全部で20時間近い長さがあるけれど、すべてを起こすわけではなく、必要なところだけ起こしてゆく。起こす必要がなさそうなところを聴いているあいだ、今日届いたばかりの「日記」を読もうとしたけれど、さすがにあまり文字を拾えないのでやめにする。そろそろ人出も落ち着いてきているだろうし、夕方から根津神社に初詣に出かけ、今日から営業しているバー「H」に立ち寄るつもりでいたけれど、知人が「喪中やけ、初詣は行かれん」というのでやめにする。

 19時、知人が作ってくれた鍋で晩酌。大晦日にも食べた鍋で、基本的には湯豆腐である。ポン酢に柑橘類を絞り、小口切りにしたネギをたっぷり後のせして平らげる。大晦日の夜に何を食べようかと話し合っているとき、知人の実家風の鍋にしようという話になり、それを食べながら紅白歌合戦を眺めていた。そのときに食べきれなかった上等な豚肉と、年越しそばの具にするつもりだった牛肉の余りがあるので、両方とも鍋に投入する。20時から『ネタフェスJAPAN』という番組が始まる。小さいこどもに「お嫁さんになりたい芸人は?」という質問をして、その結果を発表している。なんだかなあ。その企画以外にも、「お茶の間に合わせたネタに変えています」というにおいが鼻につき、チャンネルを変える。

 録画した番組の中から、『一般人、全員笑わせたら勝ち PIKOOOON!』観る。芸人たちが学校や会社、ダンススタジオに突入し、一般人を笑わせるという企画。同じく正月特番として放送された『いきなり日本を笑わせろ!』という番組と近いコンセプトだ。この『いきなり日本を笑わせろ!』はイマイチだったので、知人は「それを再生するのか」という顔をしていたけれど、『PIKOOOON!』のほうは面白く、ふたりで大笑いする。

 『いきなり日本を笑わせろ!』は、「ファミリーレストランで隣の席になった一般人を笑わせる」という企画で、「感染症対策を施して収録を行っています」と番組冒頭に出ていたけれど、(ソーシャルディスタンスを保っているとはいえ)食事をしている客の隣で、マスクも何もつけていない芸人がしゃべる(している芸人もいたけれど、していない芸人もいた)という時点で、笑う以前に心配になってしまった。今の状況下で、隣の席に座った人がマスクを外して大声で話し始めたらと思うとゾッとする。

 それに比べると、『PIKOOOON!』に出演する芸人たちはフェイスシールドを――よく見かけるタイプのものではなく、鼻から口にかけてピタッと隙間なく覆うタイプのものを――つけている。それに加えて、一般人のほうでも「芸人がやってくる」ということを事前に把握していて、「笑わずに耐えきれば商品がもらえる」という体裁になっているから、安心して観ていられるというのもある。この番組で大活躍するサンシャイン池崎の姿に腹がよじれる。