3月27日

 5時に目を覚ます。今日から沖縄に出かけるので、朝から荷造りをする。しばらく東京を離れるので、レコーダーの容量を空けておかなければと、放送が終了したテレビドラマをブルーレイに焼く。11時、『俺の家の話』最終回を再生し始める。半分まで観たところで再生を停めて、知人にトマト缶と鯖缶のパスタを作ってもらって、そのあいだに荷造りを完成させる。食べながら最後まで観る。良いドラマだったけれど、何より長瀬智也に捧げられたドラマだ。12時20分にドラマを観終えて、歯を磨き、コーヒーを飲んで、12時35分にアパートを出る。途中で日本酒の品揃えがいい酒屋「I」に立ち寄る。スーツケースを持って店内を歩くと迷惑だろうと、表にスーツケースを置いておく。沖縄の離島に滞在するときの手土産にしようと、日本酒の5号瓶を2本買って、沖縄の宿宛に配送手続きをお願いする。伝票を書き終えて、店員さんに手渡そうとしていると、店員さんは常連客とおぼしき人と談笑している。スカイライナーの出発時刻は13時5分で、その時刻は15分後に迫っている。ここから駅まで、Googleマップの計算だと13分だ。その談笑が終わるのを待って伝票を処理してもらって、急いで店を出て、駅に向かう。ちょうど信号が青になったところで、運が味方しているなと不忍通りを渡って、駅へと急ぐ。言葉にならない考え事をしながら歩いている途中で、ふいに気づく。スーツケースを店の前に置いたままだ。

 急いで引き返すと、信号は赤だ。信号を待ちながら、さっき信号が青だったのはむしろ不運だったのではないかと思い返す。もしも信号を待つ時間があれば、そこでスーツケースを忘れていることに気づいたかもしれないけれど、青だったことで「とにかく急がなければ」と前に進むことしか頭に浮かばなくなっていた。「I」でスーツケースをピックアップした時点で、発車時刻は8分後に迫っている。徒歩ではもう間に合わないだろう。しかし、タクシーでももう微妙だ。ケータイを手に取り、次のスカイライナーを調べてみると、それだと14時24分着になる。14時50分の便だから、それだと荷物を預けるのは間に合わないだろう。出発駅を日暮里から千駄木に変更して調べてみたけれど、それでも間に合わなそうだ。フライトの変更ができないかと調べてみたけれど、ぼくが予約したピーチの便は搭乗予定の便が最終便だ。別の航空会社の便を急遽予約し直すということもできるけれど、その場合、予約済みの便についてはどういう手続きをすればいいのだろう。それを想像するよりも、タクシーで成田空港を目指すというのが手っ取り早い選択肢のように思えてくる。検索すると、成田空港まで1時間18分だ。それに賭けるのが一番前向きな選択肢であるように思って、タクシーを広い、「成田空港まで」と告げる。車内ではひたすら日記を書いていた。

 Googleマップの予測はほんとうに性格で、渋滞予想が出ていたところで時間のロスがあり、成田空港に到着したのは14時19分だった。運賃は25000円近く。クレジットで支払いを終えて、ゆっくりとレシートが出てくるのを待って、扉を開けてもらい、カウンターに急ぐ。なんだかもう仕事を終えた空気が漂っていて、その時点でいろんなことを察したが、スーツケースを手にしばらく佇んていると、2分ほど経って係員に話しかけられる。14時50分の便を予約している旨を告げると、その便は20分で受付を終了しているので、もう手続きできないですねと言われる。まあそうだろうなと思ってはいたけれど、あまりにも淡々とした調子で言うのでむっとしてしまう。え、じゃあこの予約ってどうなるんですかと伝えると、変更やキャンセルなど効かないので、どうにもならないですね、と返ってくる。え、19分には到着して、ここで待っていたのにそちらが対応してくれなかったからここで待っていただけですし、これ、タクシーで急いできたんですけど、とレシートを見せる。繰り返しになるけれど、ここではもう、予約した便に登場することは諦めていた。でも、スタッフが表情ひとつ崩さないので、何を言っても結果は変わらないとわかっているのに食い下がってしまう。レシートを見せたところで、スタッフの表情はひとつも変わらなかった。

 シャトルバスで第1ターミナルから第3ターミナルに移動し、馴染みのジェットスターのカウンターに移動する。15時半の便があったので、その便に搭乗できないかと相談してみると、その便は満席の予定で、もしかしたら直前でキャンセルが出るかもしれないけれど、その場合でも4万円以上かかってしまうので、明日の便をおすすめしますと告げられる。その言葉に従って、空港をあとにして、日暮里まで引き返す。知人に乗りそびれた旨をメールで伝えても、当然ながらまったく同情されることはなかった。スカイライナーから見える風景は天気がよく、このまま家に引き返すのは憚られたので、根津のバー「H」で知人と待ち合わせ。ハイボールを3杯飲んで、「海上海」でよだれ鶏イカと紫蘇のうまいやつをテイクアウト。ハイボールを3杯飲んだせいで、8時にはもう眠ってしまった。