8月5日

 6時半に起きる。溜まっていた洗い物を片付け、コーヒーを淹れ、たまごかけごはんを平らげる。洗濯物を干し、ストレッチをして、原稿を書き始める。今日は猛暑日になると、朝の情報番組で言っていた。そんな日はカレーだと思ったものの、思い浮かぶのはCoCo壱だけだ。こんな暑い日は誰かに運んできてもらいたいけれど、こんな猛暑の中を配達してもらうような身分なのかと考え始めると出前館で注文できず、持ち帰り注文をして、自転車こいで取りに行く。

 CoCo壱の前に、ドラッグストアに立ち寄る。以前は夕方になるとやなか銀座の「越後屋本店」で生ビールを飲みに行ったついでに、よみせ通りのドラッグストアで買い物できていたけれど、最近は飲みに出ることもなくなってしまい、洗剤やら何やらが残りわずかになっていた。洗剤や歯ブラシや髭剃りの替え刃、それに箱ティッシュ(3個入り)も2セット買い求めたのち、期間限定の「チキンとトマトのホットスパイスカレー」(1辛)をテイクアウト。ドラッグストアで買った大量の荷物を抱えながら自転車を走らせたせいか、家にたどり着くとカレーがそこそここぼれてしまっている。

 帰宅後にケータイを確認すると、WEB「H」の連載を担当してくれているTさんから着信があったことに気づく。メールも届いていて、明日から取材するつもりだったお店の方が体調を崩してしまって、延期して欲しいと連絡があったという。この連載は何度か中止を余儀なくされてきたし、なにより体調が最優先なので、取材できなくて残念という感情が浮かばなくなっていることに気づく。無理に取材するよりも、現時点で取材できている範囲で書籍化しましょう、と決める。取材と原稿が詰め詰めになっていたから、ひとつひとつの原稿をじっくり書けるので、ほっとしたところもある。

 そんなことがあったせいか、午後はすぐに原稿を書く気にならず、布団を干し、シーツと枕カバーを洗い、タオルケットも洗いと、何度も洗濯機をまわす。あっという間に洗濯物が乾く。ベランダの向こうに広がる、お隣さんの庭に目を向け、「そういえばこのあたりで野良猫って見たことないな」とふいに思う。昼過ぎにチャイムが鳴る。今日は宅配される荷物もなかったはずだと、無視してしまう。しばらく前に(「皆さんオリンピックで中継見てますよね?」ということだろうか)NHKがやってきて、「いまちょっと時間がないので、資料かなにか入れておいてください」と言っておいた(「わかりました、入れておきます」と言っていたのに、ポストには何も入っていなかった)。またNHKかと思っていたけれど、あとで郵便受けを除くと、日本郵便の不在通知が入っている。明日発売の『群像』、ぶ厚すぎてポストに入らなかったようだ。

 再配達の手続きをして、17時過ぎ、自転車で出かける。「古書ほうろう」は感染拡大を受けて自主的に休業しているけれど、軒先に均一棚だけ並べている(料金は野菜の無人販売所方式)。そこから不忍池を抜け、せっかくだからと上野の様子を眺めておく。ガード下の飲み屋は今日も盛況だが、思いのほかシャッターを下ろしているお店もある。肩が触れる距離でマスクを外し、談笑しながら楽しそうに酒を飲む人たちを見て、まるで別の世界を生きているみたいだと思う。ぐるりと走ると、カフェで談笑する人たちの姿もガラス越しに見える。その人たちもマスクを外していて、やっぱり別世界みたいだ。