9月18日

 4時過ぎ、雨の音で目が覚める。寝ている部屋のすぐ隣に物干し台があり、トタンの屋根なので、雨音が響く。思ったより早く雨足が強まっているのかと少し驚く。音が心地よくて、再び眠りに落ちる。7時過ぎに起き出して、いくつかメールの返事を書く。本屋「Lighthouse」と、それに関連して「生活綴方」の方のツイートが流れてくる。「ちょっと、本書に対する熱狂ぶりに違和感があった」という言葉に、ぼくも近い感覚を抱いているけれど、それは嫉妬ではないかと自問自答させられる。ただ、朗読会やドキュメンタリーを観た感想として、「感動」や「涙」という言葉が流れてくると、どうしても違和感を抱いてしまう。

 思ったほど台風の影響はないようで、13時過ぎにアパートを出る。大手町で千代田線から都営三田線に乗り換えると、電車はがらがらだ。武蔵小山駅で下車すると、もう晴れ間ものぞいている。まずは「九曜書房」をのぞくも、やはり定休日。そこから南に向かって歩き始めると、あれ、この風景はみおぼえがあるなと思って路地に入ると、ジャークチキンの「アマラブ」がある。あれはもう5年前か、ここのお店の前で危口さんや藤原さんが路上麻雀をやったときに、遊びにきたことがある。ぼくは麻雀が打てないので観ているだけだったけど、印象深い一日だった。ジャークチキンを購入し、あの、以前麻雀をやっていたときにと声をかけると、「あれ、あの――もふさん?」と返ってきてびっくりする(一部で「もふ」と呼ばれている)。

 近くの公園でジャークチキンを立ち食いして、中原街道に出て「小川書店」を訪ねるも、ここもシャッターが降りている。今日は五反田遊古会に参加されているお店のうち、店舗営業されているお店をお礼もかねて巡ろうと思っていたけれど、ちゃんと調べてからくるべきだったなと反省する。これはもう一度こなければ。東急池上線から東急東横線へと縦に移動するべく、タクシーを拾って学芸大学へ。商店街を抜け、「飯島書店」。『新聞五十年』(沖縄タイムス社)と『西洋料理人物語』(築地書館)を手に帳場に向かい、会計をお願いする。あの、先日は五反田遊古会の取材でお邪魔しましたと伝えると、「ああ!」と気づいてくれる。なんだ、早く言ってよ、と。このあたりもよくくるのと尋ねられ、いや、今日は遊古会に参加されてるお店を巡ろうと思ってと答えると、「ああ、じゃあこれ」と、200円余計にお釣りを渡してくれる。いやいや、そんな、おまけしてもらうわけにはと断ろうとしたものの、「いいの、電車賃に使って」とおっしゃってくださるので、受け取って店をあとにする。

 商店街を歩き、学芸大学駅に出る。ぼくはこれまで、東急沿線に対して、どこか斜に構えたところがあった。それは、単にイメージとしての東急沿線に対して勝手な印象を抱いていただけだったのだなと、特に五反田遊古会の取材を経た今となっては思う。勝手に抱いているイメージよりも、もっとこう、ちゃきちゃきしている。学芸大学から一駅電車に揺られ、都立大学にある「博文堂書店」へ。須賀敦子の『遠い本たちの朝』、中公新書の『原爆と検閲』(先日書評した『原爆を暴いた男』との関連)と『銀座物語』、それに、ずっと前にも買ったことがあるけれど、どこに行ったかわからなくなっているので『とんかつの誕生』も買う。取材のときはお邪魔しましたとお伝えして、駅に引き返す。

 副都心線直通の電車に乗る。ずっとせんべいを食べている乗客がいて、怪訝な目を向けてしまう。15時45分、新宿フラッグスビルの前で知人と待ち合わせる。東南口改札近くのコインロッカーに荷物を預けて、手ぶらでフラッグスビルからルミネをぶらつく。台風が去って雨が上がったのを見て外出を決めた人が多いのか、ルミネは混雑している。そして一部にはウレタンマスクで大声で話している客がいて、ひやひやする。まずはフラッグスの「オッシュマンズ」――いつのまにか2フロアから1フロアに縮小されている――で、チョムスのサコッシュを買って、すぐに身につけたのち、シャツと上っ張りを探してお店を巡る。これから取材を受ける機会がちょこちょこあるかもしれないので、きちんとした服を新調しておこうと思ったのだ。

 最初に訪れた「オッシュマンズ」にもモッズコートをモチーフとした上っ張りがあり、気になって試着だけしていたが、その後訪れたお店でもちらほらモッズコートを見かけた。今年の流行りなのだろうか。流行りだとしたら、買ってもあちこちで被ってしまうかもしれないなと思いつつ、あちこち巡る。2時間近くかけて、めずらしく試着も繰り返して、セントジェームスのボーダーの長袖と、マーガレットハウエルの長袖シャツ、それにアダムエロペで白い長袖とモッズコート風の上っ張りを買う。会計のたびに「分割払いで」とお願いしたけれど、普段あまり服を買わない自分としてはわりとどかんとした金額を使った。「爆買いが出たねえ」と、ぼくより知人が嬉しそうにしていて、「買った気持ちを味わいたいけ、袋持たせて」と言う。