12月3日

 6時半過ぎ、地震の揺れで目を覚ます。たまごかけごはんを平げ、コーヒーを淹れる。9時台にも地震速報が流れる。朝のは富士五湖で、今度は和歌山だ。また大きな地震がやってくるのだろうか。我が家にはほとんど何の備えもない。前住んでいたアパートの最寄りのスーパー「ワイズマート」には、4リットル入りのタンクを買えば天然水(?)が汲めるサービスがあって、あれはたしか震災後に利用し始めた気がするのだけれど、そのタンクが2本あるだけだ。たまに不安に駆られると、そのタンクに水道水を入れておく。「こんな水だと、しばらく経つと悪くなってしまうんだろうな」と思って調べてみると、細菌が繁殖したり臭いが移ったりするので、常温だと3日が限度だと出てくる。

 3日ごとに8リットルの水を入れ替えるのはもったいないので、このタンクは非常時の給水に使うとして、長期備蓄用の水をネットで探す。知人のぶんもと考えて、2リットル入りのペットボトルが6本入っている段ボールを2箱注文しておく。せっかくだからこの機会に非常食も検索してみたけれど、いろいろ幅広くヒットするので感がるのが面倒になり、ページを閉じて仕事に取り掛かる。昨日のインタビューの4分の1までを構成したところで、メールで送信。ちょうどお昼時が近づいている。今日は誕生日だから豪勢にと、「銀のさら」で10巻入りの握り寿司を2つ注文して、知人と一緒に平らげる。僕だけビールも飲んだ。

 午後、パソコンも充電できるモバイルバッテリーを充電しておいて、昨日のインタビューのテープ起こしを進める。15時過ぎたところで身支度をして、知人と一緒に散歩に出る。よく晴れている。不忍池のほとりの樹々はみごとに紅葉していて、しばらく見入る。自然を見て「きれいだ」と思う感覚が自分にもあるんだなと思うけれど、お年寄りのグループがカメラを手に自然を収めながら談笑して歩いているのを目にすると、自然を写真に収めたいとは思えないなあという気持ちにもなる。マルイ2階の「オンデーズ」に向かい、10日くらい前に踏んづけてしまって、鼻あて(?)のところが歪んでいたメガネを調整してもらって、上野松坂屋地下の「美濃吉」へ。去年、ここで煮しめ重を注文してみたら、1万円以下なのにあれこれ入っていて、そこそこボリュームもあって満足したので、今年も注文しておく。

 売り場に立つ店員さんは、自分の母親と同じぐらいの世代だろうか、ゆったりとした動きで予約受付用のファイルを探して、ページを繰り、こちらにご記入くださいねと紙を差し出す。もしかしたらネット経由でも予約ができるのかもしれず、だとしたらその方が圧倒的にスムーズだと思いはするけれど、お正月の準備ぐらいゆったりすればいいなと思うし、上野のデパ地下でせかせかした接客をされても戸惑ってしまうだろうなと思う。隣のパルコにも入り、2階に入っている「P」に立ち寄る。今度、委員会の懇親会が開催される。去年は緊急事態宣言下だったのでいつもの会議室で開催された懇親会だが、今年はホテルで開催すると通達があった。なんとなくいつもの格好ではふさわしくないのだろうなと思ってしまう。自分が持っているジャケットといえば、数年前になぜかポPで買ったジャケットだけだ。でも、それにふさわしい素材のズボンを持っていなくて、このままだと上下がちぐはぐになってしまう気がする。だから今日は、ジャケットの素材に釣り合ったズボンを買うつもりでやってきたのだ。

 お店に入ると、ほどなくして店員さんに「何かお探しですか」と声をかけられる。前にここでジャケット買ったんですけど、と言ってコートを脱ぎ、ジャケットをみせる。これに合うズボンが欲しいんです、と告げると、店員さんは何着かセットアップの服を取り出して、見せてくれる。ただ、素人目にも、そのズボンの質感がぼくの持っているジャケットとはかなり違っている。その瞬間に、今日ここでお金を使おうという気持ちがどこかに消えて、しばらく迷っているふりをしたのち、ちょっと、考えますといって店を出る。別に普段ジャケットを着る用事もないのだから、懇親会でちょっと変な格好であろうが、気にすることもないなと思い直す。

 上野広小路駅から銀座線に乗り、田原町で降りる。浅草に出て、「水口」に入る。1階席はそれなりに賑わっていたけれど、ちょうど入り口近くの2人掛けのテーブルが空いたところだったので、そこに座らせてもらう。知人は中ジョッキを、ぼくはサッポロの大瓶を頼んで乾杯。まだお寿司が腹に溜まっているのでまぐろは頼まず、さんまの塩焼き、やりいかを蒸したやつ、それに炒り豚を注文。今夜はどこで飲もうかと考えたとき、せっかく東京の東側寄りに住んでいるのだからと浅草にやってきたわけだけれども、そういえば去年のお昼もここで飲んでいた。ビールを2本飲んだあと、熱燗(小)とカキフライを追加する。衣がごりごりしていてウマイ。知人は豆腐の味噌汁を頼んでいたので、僕も熱燗をおかわりするタイミングで味噌汁を頼んだ。

 19時近くに店を出て、バスで帰途につく。M-1グランプリ準決勝を観ながら、赤ワインを飲んだ。ロングコートダディともも、金属バットとダイタクは面白く、男性ブランコとオズワルドとランジャタイは声を出して笑った。でも、この7組のうち、決勝に残ったのは3組だけだ。漫才を見ている途中でケータイが鳴り、Fさんから動画が届く。もしや、と思って確認すると、稽古をしているはずであろう皆がそこに映っている。嬉しいような申し訳ないような気持ちになりつつも、返事を返す。