2月4日

 7時頃に目を覚ます。ケータイを確認すると、日付が変わった頃にPCR検査の結果が届いていて、「検出なし」とある。沖縄PCR検査センターには通常検査とクイックコースがあり、通常だと翌日に、クイックだと当日に結果が出る。僕が申し込んでいたのは通常検査だったのに、検査から12時間で結果が出ている。それだけ検査数が少なくなっているのだろう。9時過ぎにホテルを出て、スタバで魔法瓶にコーヒーを入れてもらったのち、市場界隈を散策する。「金壺食堂」に立ち寄り、ちまきを買う。昨年末にはバイキングが復活していたけれど、今はまたテイクアウト専門に戻っている。ホテルの部屋に戻ると、外から轟音が聴こえてくる。戦闘機の音だ。

 午前中は沖縄滞在中のスケジュールを調整しているうちに過ぎてゆく。13時半に再び宿を出て、界隈を散策する。今日の「Jef」はわりと賑わっていてホッとする。昨日のお礼もかねて、「上原パーラー」でお弁当を買う(といっても、300円と格安のお弁当だけれども)。「カフェ・パラソル」でコーヒーをテイクアウトして、宿に戻り、お弁当を平らげる。小ぶりなお弁当ながらも満腹になり、ベッドに寝転がってうだうだ過ごす。夕方、しばらく鼎談企画のテープ起こしを進めたのち、18時が近づいたところで外に出た。

 小雨が降っている。国際通りセブンイレブンでチケットを発券し、小さいノートを買って、劇場に向かう。開演35分前(開場5分前)に劇場に到着してみると、マスクをずらして、あるいはマスクをせずに談笑している人の姿がちらほら見えてぎょっとする。まじか、と思いつつ、ロビーの隅っこで会場時間を待つ。整理番号は61番。順番がきたところで入場し、後ろの方の座席に荷物をおいたあとロビーに出て、開演時刻ギリギリに座席に引き返す。上演前にテキストを見せてもらっていて、それは素晴らしいという前提があるからこそ、どこか違和感をおぼえる。序盤の食卓の場面、言葉とその向こう側にあるはずの粒だった感情が伝わってこなくて、平らで、言葉が滑っていくように聞こえてしまう。会話というのは実はモノローグに近くて、お互いがお互いの言いたいことを言い合っているに過ぎないのかもしれない――ということは承知しているけれど、それでもその言葉を発語するその人物のなにかが浮かび上がってこず、台本を読み進められているように聴こえる。また、序盤のシーンたちをそう感じてしまったぶん、舞台の終盤、ある男が「地下室」に降りていってからのシーンにグルーヴが、リフレインがかかっている感じが薄く、展開が唐突に感じてしまう。軸となる男が漂流している感じが伝わってこないせいか、突然抽象的なことを言い出したように感じる。それは設計図の問題ではなく、俳優の発語次第で全然変わってくるところだと思う。終演後、Googleマップで最寄りのコンビニを探し、オリオンビールのロング缶を2本買う。そこから宿に引き返す途中、劇場の前を通りかかると、ガラス越しにN.Aさんと目が合う。なんとなく感想を話しづらい気がして、窓越しに手を振るNさんに会釈をして、市場界隈まで歩く。

 もう21時を回っているから、ほとんどのお店は閉店しているけれど、今日は金曜日だからか、局所的に騒がしい。すべての店が閉まっている新天地市場通りでは、スケボーの練習をする若者たち(いくらなんでも、ここじゃなくても、とは思う)。あちらこちらで、座り込んでお酒を飲んだり、タバコを吸ったりする人たちを見かける。往来のところどころに空き缶やゴミが打ち捨てられている。かりゆし通りを通りかかると、今日も賑やかに盛り上がっているお店があって、みんな一様にマスクを外している。それはまあ、僕が口を挟むことではないにしても、向かいにあるパン屋さんの陳列台を椅子がわりに飲んでいる様子に、なんとも言えない気持ちに、やっぱりなってしまう。ファミリーマートで麻婆豆腐と缶ビールをもう1本買って、ホテルにたどり着く。