2月11日

 6時過ぎに目を覚ます。上の階から生活音が聴こえ始めたのを確認して、洗濯機をまわす。旅行中のものも含めて、洗濯物が溜まりに溜まっている。ベランダについていた水滴を拭き、洗濯物を干す。どうにも湿度が高い感じがして、今日は2回転したかったけど、なかなか乾かないかもなと思う。コーヒーを淹れて、昨日のおでんの残りで朝ごはん。おでんの大根の仕込みだけ済ませて、10時半に家を出る。秋葉原に向かい、PCR検査を受ける。30秒で採取を終えて、「キンコーズ」(秋葉原店)で、B2のポスターと、別バージョンのA4サイズのチラシを何部か印刷する。

 丸めてもらったポスターを大事に抱えて、御茶ノ水方面を目指して歩く。ところどころで警察が警戒にあたっているのを見て、ああそうか、今日は建国記念日かと気づく。時刻は12時、「おにやんま」を通りかかると空いていたので、天ぷらうどんを平らげる。御茶ノ水丸善、神保町の三省堂書店東京堂書店を巡りながら、どんなふうに並べてもらっているのかを見てまわる。大手町経由で千駄木に引き返し、「やなか珈琲」で豆を買ったあと、「往来堂書店」に立ち寄る。ちょうど入荷したばかりといった佇まいで、『水納島再訪』が並んでいる。いわゆる独立系書店の場合、流通の関係で少し配本が遅くなっているようで、申し訳ない。

 『群像』は献本いただいているので、『新潮』、『文學界』、それに『本の雑誌』を買って帰途につく。不忍通りを歩いていると、「ちゃんと横断歩道があるとこ渡れよ、オイ」という声が聴こえて、えっ、と振り返る。警察がそんな口調で注意していいのかと思って見ると、そこにいたのは街宣車だった。そんな口調でマイクでしゃべりかけられたら、と想像する。あなたたちは、法律を定めているところの現在の国家権力のありようというものを全面的に肯定するのか、それとは別の可能性を、もっと土地に根ざした国家のありようというものを模索したいと思わないのかと言ったら、なんと返ってくるだろう。

 家に帰ってみると、「平野歩夢がすごかったで」と、知人が興奮した様子で話している。13時から1時間半ほど、S・Iというプロジェクトのドキュメントの今後の方向性について、Zoomで打ち合わせ。途中に2度、登録していない番号から着信があり、なにかと思って折り返してみると、「E商店」を営んでおられた方だ。先日、息子さんのケータイ越しにビデオ通話をしていたのだが、そのときに「直接会ってお話ししたい」と言われ、「11日くらいまでは滞在しているかと思うので、もしタイミングが合う日があれば、連絡を取り合ってお会いできたら」と伝えていたのだが、それが「11日にお会いしましょう」という話として伝わってしまっていたようで、「今、劇場で待っていた」と言われ、平謝りする。

 RK新報の原稿を書きながら、おでんの仕込みをする。18時から晩酌。『透明なゆりかご』を観ながら、沖縄滞在中に思っていたことを知人に伝える。今回宿泊していたホテルは、小さなテーブルの前に鏡があり、机に向かって仕事をしているあいだは、自分の姿が目の前に映し出されている。そこでぼんやりしているときに、あれ、ちょっと、最近よく見る女優に、人間の顔を大雑把に分類すればちょっと似ているんじゃないか・・?と、ふと思ったのだった。さすがに「なに馬鹿なこと言いよんじゃ」と一蹴されるかなと思いながらも、知人にそのことを伝えて、ちょっと寄せた表情をしてみると、「ほんまや!」と知人が大笑いする。ちょっと、もう、そういう目でしか見れんくなったやんと、ドラマを再生しているあいだ、知人は笑い続けていた。