10月3日
7時過ぎに目を覚ます。茹で玉子を6個作り、そのうちの2個を食べる。午前中は『E』誌の原稿を書く。昼、近所の八百屋で焼きそばともやしを買ってきて、知人をおだてて焼きそばを作ってもらう。12時半に一緒にアパートを出て、千代田線で新御茶ノ水に出る。そこから中央線に乗り換えるまでの道中で、どうしてそんなに不用意に人混みにつっこむのか、どうして端っこの車両に乗ろうとしないのかと食い違い、それぞれ別々の車両に乗り込んだ。今日もビールを飲み干してから、14時から観劇。今日は2階席から観た。東京という街に暮らしている人たちに、この作品が響くだろうかと、勝手に心許ない気持ちになる。東京という街のスピード感に慣れた観客に、ふとした出来事に引っかかってしまって、立ち止まってしまう中学生の子の物語というのが、どんなふうに響くのだろう。今日の出来がどうとか、作品の完成度だとか、そういったこととはまったく別の次元の問題として、そんなことを考えてしまう。終演後は近くの無印良品に立ち寄り、シャツを2着買う。「新疆綿」と書かれているのが目に留まり、これを買えばウイグルの応援になるのではなんて浅はかなことを感じて2着買ったのだが、あとになって調べてみるとむしろその逆で、それは中国政府が強制労働させた綿であることから、無印良品が批判にさらされているとの記事が出てきた。三鷹で散髪を終えた知人と待ち合わせ、同じ電車に乗り、帰途につく。飯田橋駅近くの「CANAL CAFÉ」は、オープンエアーな空間で飲み食いできるからか、お客さんで埋まっているのが見えた。御茶ノ水から新御茶ノ水に乗り換える途中に「成城石井」に立ち寄り、惣菜を何種類か購入する。それと一緒に、久しぶりで赤ワインを買った。チリ産のカルメネーレという品種のワインだ。2013年にマームとサンティアゴに出かけたとき、初日乾杯に振る舞われたカルメネーレがいたくうまかったことを、いつまでもおぼえている。アパートにたどり着き、溜まっている録画の中から『アメトーーク!!』の「若手女芸人」を観た。そこにラランドというコンビのさーやという女芸人も出演していた。彼女は広告系の会社に勤めるかたわら、フリーの芸人として活動している。よく『ネタパレ』などでそのネタは目にしてきたけれど、今日は目つきからして違っている。この場に賭けて、何か言葉を発しようという気概に満ちており、それがどこまで業界に届いたのかはわからないけれど(少なくとも『アメトーーク!!』のスタッフには響いていないだろう――響いていたとしたらこの編集にはならない)、その目を見た以上は、彼女のことを応援しなければという気持ちになる。録画は山のように溜まっているけれど、なにか物語が観たい気持ちになったので、『ホテル・ムンバイ』を観る。知人は我が身(もしくは我が家族の身)のことだけ考えて行動する登場人物に呪詛の言葉を繰り出す。この映画は実際のテロをもとにした映画で、このニュースを観た日のことを、うっすらおぼえている。高級なホテルに宿泊していると、こういう事件に巻き込まれることもあるのだなと、どこまでも他人事のように思ってしまったことを思い出す。映画を観終えたあと、実際のニュース映像や、さかのぼって9.11の映像をYouTubeで再生していると、知人がもうやめてほしいというので再生を止め、布団を敷く。