1月14日

 8時に目を覚ます。知人がいるときは早々に酔っ払って眠りにつくから、そのぶん目が覚めるのも早くなる。今はチビチビ飲んでいるから、眠るのも日付が変わるぐらいになり、そのぶん起きるのも遅くなる。体内時計(?)が結構正確だ。テレビをつけると、紫吹淳城崎温泉を旅している。街をめぐり、カニを頬張り、日本酒を飲んでいる。冷凍ごはんを解凍し、鍋の残りで雑炊にする。午前中からテープ起こしを進める。昼前に炊飯器のスイッチを押し、買い物に出る。まずはセブンイレブンで98円のレトルトカレー(辛口)を買ったのち、八百屋。今日の夜も鍋にするつもりなので、えのきと椎茸を買っておく。棚に広島さんの牡蠣があり、283円のパックもある。ちょっと贅沢にと、これも手に取る。レジを通してみると、牡蠣より、値札が張られていなかった「食べるいりこ」のほうが倍近い値段で驚く。帰宅後、じゃがいもを一個(一口サイズに切ってレンジでチンしたやつ)、らっきょうを4個添えて、レトルトカレーを平らげる。

 午後もひたすらテープ起こし。あまり捗らず。18時にはビールをあけ、サッポロポテトをつまみながらテープ起こしを続ける。20時に作業を“中断”し、鍋を作る。黒霧島の湯割りを飲みながら、鍋をつつく。『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(昨日までの日記、記憶をもとに書いていたからタイトルが間違っていた気がする)の9話と10話を観る。人は変わるのか、というテーマが根っこにある。このドラマは5話までが第一部で、6話以降が第二部になっていて、そのあいだに5年の歳月が流れている。いかにも純朴な青年だった練は、派遣搾取ビジネスに加担する人になっていた。その背景に、祖父の死がある。祖父は晩年、認知症を患っていたのか、練が自分の孫ともわからなくなって「土地を返せ!」などと口汚く罵り続けていたという。祖父は駅前のトイレで遺言も残さないまま亡くなり、それで人が変わったようになっていた。ただ、音との再会によって、元の練に戻る――この流れで言うと、「練は変わっていなかったんだ」というのはポジティブなことのように見える。一方の音は、育ての父が亡くなったことで、東京での生活を手放して郷里に戻る。彼女の育ての母には介護が必要で、北海道に戻らざるを得なかったのだ。北海道に戻った音は、わざわざ訪ねてきた練に、「結局振り出しにもどった、ここを出ても何も変わらなかった」と、わざと冷たい物言いをする。そんな音に対して、そんなことはない、何も変わらなかったことなんてないのだと、練は語りかける。東京で過ごした時間は確かにあったのだし、そこで出会った人たちだっていたのだから、と。坂元作品としては珍しくハッピーエンドという感じがする(というよりも、思いを寄せ合っていながらも、はなればなれに過ごしている――というラストが多い印象がある)。

 ドラマを観終えたところで22時半、さてここからどうしよう。テープ起こしを再開するつもりでいたけれど、この時間から仕事をする気にもなれない。なにか映像作品を観るのであれば、自分が原稿を書くときの栄養になりそうなものを観たい。なんとなく、『ゴッドファーザー』にしようかと思い立ち、それならお湯割りじゃなくてワインだなと、セブンに出かける。ほろ酔い気分でワインの棚を眺めていると、あれ、ワインが全体的に値上がりしている気がする。一番安いワインが、セブンプレミアムのビノセントという銘柄で、税込514円だ。この銘柄を買ったことはあんまりなくて、よく買うのは、今目の前の棚に並んでいるものだと、セブンプレミアムヨセミテ・ロード」か、アルパカワインである。ただ、ヨセミテは税込627円、アルパカは税込608円で、セブンの商品のほうがちょっとだけ高価だ。おかしいなあ、アルパカワインより手頃だったはずなんだけどなあと思いながら、ヨセミテ・ロードを買って帰る。翌朝になって気づいたのだが、僕がよく買っていたのは――そしてアルパカワインよりずっと手頃だったのは――セブンの「アンデス・キーパー」というワインで、税別388円、税込でも426円だ。どうして昨日は棚に並んでいなかったのか。これまでも品切れになっていたことはあったけれど、そういうときだと棚の一部が空になっていて、そこにアンデスキーパーの値札は置かれたままになっていた。でも、昨日は値札ごと消え去っていた。ツイッターで検索すると、アンデスキーパーは廃盤になったのではないかという情報が流れている。あんなに手頃なワインは他にないので、なくなると厳しい。

 その一方で、また別のことも考える。今日は18時半から『やぶからディッシュ』という番組が放送されていた。「今日一日、あなたのスケジュールをもらっているので、今から一番食べたい一皿を食べに行きませんか?」と、ゲストの思い出の味を食べに行く番組だ。“サプライズ”でそう提案されたゲストは、これから食べに行くのであればと、記憶に残る料理をいくつも挙げていく。そのひとつひとつが、映像とともに紹介される。その値段を見て、「ええもん食ってんなあ」と思っている自分に気づく。別に高級なものを食べたいという思いはないけれど、好きなものを好きなだけ食べれるといいなあと思う。自分の仕事は給料制ではないのだから、もっと稼げるようになれば、好きなものを食べられるはずではある。ほどほどに仕事をこなしている時期ならともかく、今のように晩酌をしながらも作業を進めているときに、「節約しないと」と考えていると、心のどこかがしぼんでいく感じがする。