4月2日

 7時過ぎに目を覚ます。知人は8時には出かけて行った。ひじきの煮物を作る。2回目だから、前より穏当な味付けに仕上がった。朝はいつものように、納豆ご飯とインスタント味噌汁、ひじきの煮物にししゃも2匹。昨晩のうちに新しいWindowsのパソコンのセットアップは済ませてあったので、テープ起こしを進める。今回買ったのはNECながら(型落ちモデルとはいえ、ワードを含むマイクロソフトのソフトのライセンスがついて)4万円という格安パソコンなのに、10年前に買ったパソコンよりはっきり性能が上がっている感じがして、世の中は進化しているのだなあと感じる。

 お昼前に宅急便が届く。実家にいったん保管しておいた夏服を、段ボールごと送り返してもらった。中には手紙が入っていて、普段は実家から届く手紙にほとんど目を通さないのに、今日はなんとなく目を通すと、父の足に腫瘍があり、おそらく寮生ではあるけれど「足を切断するしかない」と医者に言われたものの、父は「切断はしない」と言っている、と綴られていた。自分自身の家族に対する関心や執着というものが、おそらく世の人たちより薄いほうではあると思うのだけれども、そうか、足の切断か、とは思う。今年のゴールデンウィークは帰って来れるかどうかと、母から連絡があったのも、おそらくこうした事情を踏まえてのことだったのだろう(その連絡は、父の腫瘍について知らせるものではなく、兄夫婦はゴールデンウィークに帰省するらしいと知らせるだけのものだった)。

 昼は肉野菜炒めを作って平らげ、テープ起こしを進める。気づけば15時28分になっていて、慌ててテレビをつけ、今日開催される大阪杯の発送時刻をネットで検索する。発送時刻は15時40分だから、まだ間に合いそうだ。ジャックドールかヒシイグアスが1着か2着に入ると予想して、3着に差し馬が入る予想を立てて馬券を8点買った。ジャックドールは見事に1着に入ったものの、ヒシイグアスは伸び悩んで掲示板から外れた(「差し馬」として候補に入れたダノンザキッドは3着に食い込んでいたから、今回もワイドで買っておけば当たっていた)。

 18時過ぎに買い物に出る。ひとりぶんの夕食を作る気にならず、スーパーでれんこんサラダ、肉じゃが、親鶏の炭火焼きを買って帰途につく。日曜日のこの時間帯になると、団子坂はひっそりしている(平日だと高校生や大学生とおぼしき若者が賑やかに歩いていることもある。知人は「最近、上京してきたばっかの大学生なんかしらんけど、下ネタみたいな話を大声で話しながら行き交う若者が多い」と言っていた)。家に戻り、取材でお会いすることになりそうな方が出演している映画を片っ端から観ておこうと、『桐島、部活やめるってよ』を観た。タイトルだけはもちろん知っているけれど、「桐島、出てこないんだ」と新鮮な気持ちになる。僕の中で「徒労」ということばは(『雪国』で出会って以来)印象深い言葉として頭の中にあるのだけど、徒労だとしてもそこに身を投じていく人生の不思議をやさしく描いた物語で、ああ、この映画が公開された時期に若者としてこの映画に出会えた人たちは幸せだったのではないかと、勝手なことを考える。続けて『悪の教典』も観た。伊藤英明がサイコなキャラクターを演じていて、去年放送されたドラマ『初恋の悪魔』でも伊藤英明はなかなかな役どころを演じていて、思い切ったキャスティングだななんて(伊藤英明が出演している映像作品をほとんど観たことがなかったせいで)思っていたけれど、こういう文脈があったのだなと今更ながらに気づかされる。シリアスな場面なのだろうけども、酒を飲みながら眺めているとそのシリアスが妙におかしく見えてきて、途中で再生を止めてしまった。