4月1日

 5時過ぎに目を覚ます。知人がずっとケータイをいじっている。今日は一日寝て過ごせるからか、とても楽しそうにしている。7時過ぎに布団から這い出して、パソコンを開く。沖縄のお昼の番組に出演するのは来週金曜日だ。ということは1週間を切っている。沖縄まで本を届けるのは5日ぐらいかかることを考えると、「オンエアがありますので」と案内するなら、ここ数日のうちに伝えたほうがよさそうだ。僕が取材した界隈は「県民の台所」という形容がしばしばなされている。戦後まもないころ、スーパーやショッピングモールが存在しなかった時代には、県内各地から買い物客が押し寄せたことで、そう呼ばれるようになったのだろう。だが、スーパーが増えた今では、市場界隈に足を運んだことがない層も増えつつある。ただ、そうした変化を加味してもなお、市場界隈は「県民の台所」だという感じがする。界隈で取材をしていると、「終戦後、きょうだいを食わせていくために中学卒業と同時に郷里を離れ、那覇に働きに出た」という語りに出くわすことが多々ある。那覇の市場界隈は、那覇出身者だけでなく、やんばるや本島南部、あるいは離島から集まってきた人たちが働いてきた場所だ。そうした意味でも、あの一帯は「県民の台所」なのだと思う――そういった文脈で話をするつもりでいるから、那覇の書店だけでなく、県内各地の書店、石垣島宮古島の書店にもぜひ取り扱ってもらいたい。本来なら直接ご挨拶に伺うべきではあるけど、せっかくお昼の番組に出演するのだから、案内を送っておきたい――そんな気持ちに駆られ、石垣と宮古の書店宛に手紙を書き、A4サイズのポスターと一緒にレターパックライトで発送する。そして、半月前に訪ねて行ったある書店に電話をかけ、「以前お店にお邪魔して、新刊のご案内をさせていただいた橋本です、そのときにもお昼の番組に出演するというお話をお伝えしておりましたが、その後放送日が確定しまして、来週金曜日になりましたので、その旨だけお伝えさせていただければとお電話した次第です」と、伝えておく。

 昼は知人の作るトマト缶とサバ缶のパスタを平らげる(普段は日曜日に食べるメニューだけど、知人は明日、現場があるので不在だ)。ビールも1缶飲んだ。沖縄でトークイベントを開催しないかという依頼を受けているほかに、ゴールデンウィークあたりで別の土地でもトークを開催したいと考えていたり、取材に出かけたいと思っていたり、あれこれ構想だけは頭の中にある。ただ、頭の中に構想があってもどうにもならず、先方にアプローチしてみないことにはなんとも言えないことばかりなので、オンラインでやり取りできる方にはオンラインでメッセージを送り、そうでない方には手紙を書き、封筒に入れて発送の準備をしておく。

 今日はどこにも出かけるつもりはなかったのだけれども、雲一つない空を見た知人が散歩に行きたそうにしている上に、数日前にSNSで見かけて気になっていたサハリンに関する写真集、「古書ほうろう」で写真展を開催中だと知り、せっかくだから観に行ってみようかと、17時過ぎになってようやく出かける(この時間になってしまったのは、おととい注文したノートパソコンが今日届く予定になっていて、配送業者はS急便で、朝9時19分から「配達中」という表示になっていたのでずっと待機していたのだが、届いたのは17時過ぎだった)。荷物を受け取ってすぐに散歩に出ると、細野晴臣「ぼくはちょっと」を鼻歌で歌いたくなる。細野晴臣の音楽をほとんど通ってきたことがなくて、昨日になってなぜか初めて聴いたのだけれども、この歌が頭の中に流れている。東京大学を眺めつつ散歩し、久しぶりで「古書ほうろう」に行った。棚を眺めていると楽しく、美術や俳句に関する古書を買いつつ、写真集も買い求める。棚を眺めるのは楽しい。お店を出ると、すっかり日が暮れていた。角のミニストップで缶ビールを買って、不忍池に出てみると、桜がライトアップされているのが見えた。