7月6日

 6時頃に目を覚ます。昨日は晩ごはんらしい晩ごはんを食べずに眠ってしまったので、腹が減っている。8時にホテルを出てみると、小雨が降っている。「セブンイレブン」(大阪芝田二丁目店)でどん兵衛の特盛を買って、湯を入れて宿に戻り、平らげる。取材に向けた質問リストを作っているうちに10時半になり、荷造りをして11時にチェックアウト。ホテルのロビーまできてくれていた編集のAさんと一緒に出かけ、大阪新東急ホテルのラウンジ「サルトル」で打ち合わせ。ここは打ち合わせのメッカなのだとAさんが教えてくれる。たしかに抜群の立地にある、しかしそれにしてはがらがらだ。入り口には7月1日から営業を再開したと書かれていた。小一時間で打ち合わせを終えて、阪急のレストランフロアへ。ここもかなり閑散としている。東京に比べると、大阪のほうが新規感染者数は抑えられているはずなのに、この土地のほうが警戒感を保っているように感じる。

 連れて行ってもらった先は「鰻萬」(阪急うめだ本店)だ。メニューを開くと、最初のページには鰻重が掲載されており、真っ先に値段を見ると4840円だ。よ……。一番安いものはと探し、3000円ほどの鰻重を選んだ。朝はどん兵衛をすすっていたのに、内臓がびっくりしそう。お腹を満たしたところで、ナビオまで移動。まだ雨は小降りだけれども、かなり強く風が吹き始める。8階にある「丸福珈琲店」に行ってみると、ほとんどお客さんはおらず、「やっぱり、ここなら空いてると思っててん」とAさん。コーヒーを飲みながら、質問リストをまとめ直す。13時45分、「紀伊國屋書店」(梅田本店)を少しだけぶらつき、野坂昭如『俺の遺言 幻の「週刊文春」世紀末コラム』(文春文庫)を買う。巻末には編者である坪内さんの解説があり、最後の二文に目を瞠り、買っておく。本当は野坂昭如の『文壇』と、十返肇の『「文壇」の崩壊』が読みたくて(どちらも買ったおぼえがあるのだけど、おそらく実家に送ってしまっていて見当たらない)、神戸の「ジュンク堂書店」でも探したのだけれども、店頭に在庫はなかった。あきらめてAmazonで買うことにする。

 14時15分、取材が始まる。昼の営業と夜の営業のあいまに話を聞かせていただいているので、時間に気を遣いながら話を聞かせてもらう。まだまだ聞きたいことはあったけれど、15時45分にはおふたりからそれぞれ話を聞き終わり、料理を出していただいて写真を撮る。編集のAさんにリングライトを持ってもらって、照らしながら撮る。作っていただいたお造りと、コロッケとはぼくが食べることになり、そんなに繊細な舌を持っていないのに申し訳ないなと緊張しながら平らげる。お造りに添えられていた納豆醤油、香りがとてもよく、うまかった。取材後、梅田まで引き返し、グランフロント大阪で入れそうな店を探す。1階の店はどこも密な気配が漂っているので、南館の7階まで上がってみる。まだ営業前の店が多かったものの、南館7階の「和食たちばな」というお店は営業しているようだったので、入店してビールを頼んだ。取材のことを振り返りながら、4杯飲んだ。

 Aさんと別れ、ホテルで荷物を引き取る。雨がかなり強く降り始めている。今日は平日だから、大阪駅から東へ向かう電車はなかなか混み合っている。新快速は見送り、各停に乗り込んだ。それでもそれなりに混んでいる。新大阪駅で駅弁を探していると、駅弁うりばに「水了軒」の汽車弁が何事もなかったかのように並んでいて驚く。以前は新大阪駅では八角弁当しか見当たらず、大丸のうりばに行って店員さんに「汽車弁っていうのはないんですか」と尋ねてみても、まったく通じなかったのに。アサヒスーパードライ(350ml)を3本買って、改札をくぐると、豪雨の影響なのか新幹線のダイヤは乱れていた。それならお土産を選ぶ時間もあったのになと、コンコースをぶらつき、551の売店を見つける。知人からリクエストがあったので、豚まん(4個入り)を購入し、27番ホームに向かう。マスクをつけていない人の姿もあり、急に不安になってくる。10分遅れでやってきたのぞみ48号に乗り込んで、12号車の19A席に座る。新幹線はわりに空いていて、一つの列にひとり座っている程度だ。さっそく弁当を広げてみる。汽車弁ってこんなだったっけ。渋い弁当だったことは記憶にあるけれど、今、目の前にある弁当はあまりにもすかっとしている。せめて鮭はもうひとまわり大きかった気がするのだけれど、ぼくの曖昧な記憶では何がどう変化したのか、きちっと言い当てることができない。さきほど取材したときの写真を整理・補正し、この二日間の日記をいるうちに、東京駅にたどり着く。新大阪では10分以上遅れていたはずなのに、到着時刻はほとんど定刻通りだった。

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