8時に起きて、パンを焼いて食す。今日は十字に切り込みを入れてみたが、バターが染み込んでうまかった。昼、納豆オクラ豆腐うどん。午後は新宿ピカデリーで『ヘイトフル・エイト』を観た。上映前に映画のポスターを撮影していると、前の回を観たとおぼしき老夫婦がポスターを眺め、決定的なキーワードを口にする。

 その言葉はやはり決定的なもので、上映中も「いつそのシーンがやってくるのか」ということがずっと気になっていたけれど、ともかく映画は面白かった。パンフレットも購入する(70mmフィルムで撮影したから、3時間近くても長く感じさせないといった話が書かれていたが、さすがに長いなと感じたが)。

 前作の『ジャンゴ 繋がれざる者』も面白く、復讐の物語に感情移入しながら観ていたところがあるが、今作はそれが許されない。それは別に全員が極悪非道ということではなく、それぞれの正義を抱えているのが印象的だ。最初のうちは「何て酷い奴だ」と思って眺めていた賞金稼ぎのジョン・ルースが、時間が進むにつれて違った見え方をする。それは、同じく賞金稼ぎのマーキス・ウォーレンが持つあるアイテムをめぐる話にも凝縮されている。そのアイテムをめぐるシーンはどれも印象に残る。

 映画を観終える頃にはすっかり夜だ。思い出横丁「T」に入り、ホッピーを飲みつつパンフレットを熟読玩味していると、飲みの誘いがあった。「今から銀座で飲みます」と言われたので、すぐにホッピーを飲み干して会計を済ませ、丸ノ内線で銀座へと急ぐ。20分ほどで到着し、どこで飲んでいるのか訊ねると、「ギュウギュウなので、ちょっと食べてすぐ出ます!1時間後ぐらいに移動します!」と返信があった。

 クソが、と思う。時刻は9時になろうとしている。今日飲めるのはあと3時間くらいのものだ。ここから1時間も待っていたら、その3分の1が過ぎ去ってしまう。酒を飲むことが一番の楽しみの人間を誘っておいて、何を言っているんだという気持ちになる。人を動かすということを、一体何だと思ってるんだ――そんなあれこれを知人にメールで愚痴りながら、まあせっかく銀座に出たのだからとコリドー街にある「R」で一杯だけハイボールを飲んだ。すぐに新宿に引き返し、再び「T」に入店すると、「おかえりなさい」とマスターは笑った。