朝6時に起きて、茹でたササミ肉とヨーグルトを食す。午前中、湯に浸かりながら『週刊ポスト』を読んでたら、「これは理想郷か、それとも隔離政策か 『全員が認知症の村』を見に行った」という記事を見かける。アムステルダムから車で20分ほどの場所にある「ホグウェイ」という介護施設の話。僕は知らなかったが、2009年に開設され、世界の主要メディアでも取り上げられてきたのだという。

 高い塀にぐるりと囲まれたその介護施設は、球場くらいの面積があり、カフェやスーパーや映画館なども設置され一つの村のようになっており、「認知症患者のためのテーマパーク」とも報じられたそうだ。スーパーの店員や美容室の美容師などは全員介護施設のスタッフだという。入居できるのは認知症患者だけで、現在は152人が入居しているそうだが、入居者は6-7人でひとつの「ユニット」を組むらしかった。入居者のライフスタイルを聞き取り、7つに分類されたユニットに振り分けられるというのだが、その7分類が面白かった。日本だとどんな7分類になるだろう。

 ただ、この施設対する批判もあって、その村が高い壁に囲まれていることから「認知症患者を隔離している」という批判もあるという。しかし、隔離かどうかはともかく、入居費用が月額5000ユーロ(約62万円)というところに驚く。ここまでのサービスなら当然とも言えるが、自分には無縁の世界だ。オランダの介護施設の話なので、いずれにしても無縁なのだが、こんな老後は待っていないだろう。

 昼、豚バラ肉と野菜の炒め物を食す。午後は『S!』誌の構成を進める。15時すぎに新宿「らんぶる」に出かけ、さらに構成を進める。ふと目を上げると、少し離れた場所で同業者のLさんが打ち合わせをしているのが見えた。18時過ぎに店を出て、高田馬場まで引き返す。知人と「焼き鳥を食べに行こう」なんて連絡を取っていたけれど、構成がまだもう少し残っている。

 知人をツタヤに待たせて、構成仕事を終わらせようとしていると、NKSMさんから「今日は朝からゲームしてたんですけど、来ませんか」と誘っていただく。朝から3人でゲームをやっていたのだが、夜になって人数が増えることになって、僕も誘ってくれたらしかった。知人を待たせていたが、NKSMさんに誘ってもらえるのも珍しいのでそちらに出かけることにする。

 東西線を待っているあいだ、「これでよかったのだろうか?」という気持ちになる。先に知人と約束をしていたのに、後から入った誘いを優先してしまった。酒飲みとして仁義にもとる振る舞いだったのではないか――。そんなことをグルグル考えているうちに荻窪駅に到着して、西友ハイボール5缶と焼き鳥、それにお土産用にいちごを購入する。

 20時頃にNKSMさんの家に到着すると、「宝石の煌き」というゲームをやっているところだ。YSDさんやKWSKさん、それにKYさんやYMMTさんもいる。その他に初めて会う人もいて、少し緊張する。いや、日記なのだから正確に書かないとダメだ。緊張するというよりも、どこか好奇心を持って接している自分がいる。

 僕が到着して時点で進行中だったゲームが終わると、「宝石の煌き」をやるメンバーと、「カルバ」というゲームをやるメンバーとに分かれて遊ぶ。僕はルールを教えてもらって「宝石の煌き」に混ぜてもらう。最初は何が行われているのかわからず、自分のターンをこなしているだけだったが、ルールがつかめてくると面白くなってくる。なるほど、朝からやるほどハマるのも頷ける。最後に皆で「タイムボム」で遊んだ。

 僕はYSDさんと同じタイミングでおいとますることになった。僕は道がよくわかっていないので、何となしに歩いていたのだが、結局よくわからなくなって迷ってしまった。酔っ払っていることもあるし(酔っ払っているのは僕だけだが)、YSDさんは比較的近所だということもあり、タクシーを拾ってしまうことにする。

タクシーに揺られていると、どうしても先日の作品の話をしてしまう。「観てくださって、ありがとうございました」とYSDさんが言う。「橋本さんが楽屋にも顔を出してくれて、うれしかったです」と。わざわざ顔を出さずに帰るのもどうかと思って、観るたびに顔を出して(ビールをもらって)いたけれど、役者とは挨拶以外の会話を一切しなかった。もちろん出来が悪かったというわけではなく、作品は素晴らしかったのだが、僕が今かけられる言葉はないと思っていた。

  酔っ払っていたせいもあり、そのことをYSDさんにも伝えた。するとYSDさんは「うん、きっとそうなんだろうなと思いました」と言った。「だから、そこで楽屋にきてくれるのがうれしかったです」と。その言葉に最近少し腐っていたことがバカらしくなる。波風を立たせるために生きているわけではないのだから、一つ一つとちゃんと向き合っていればいいのだという気持ちになる。そのせいか、翌日の知人の報告によると、「昨日は珍しくご機嫌で帰ってきた」という。