雨と風の音で目がさめる。テレビをつけると台風中継みたいになっていたけれど、8時半頃には嘘みたいに晴れていた。午前、昨日食べたピザの話を書き加えて、原稿をすべて書き終える。『まえのひを再訪する』というタイトルで7月に刊行するつもりでいる。

 もう自分で印刷して販売するというのはもういいだろうという気持ちになっているので、フリーペーパーならぬフリー本として印刷し、決まった場所に置いておくのではなく僕が普段から街でぼんやり過ごすことにして、遭遇できた人に配布する――そういう変なことをやったら面白いんじゃないかと考えていたのだが、資金もないのでまた値段をつけることになるだろう。

 午後、『あっこのはなし』の昼公演が終わる時間にあわせて新宿に出て、物販に追加納品。売れているようで嬉しい。昼公演のお客さんがハケると西口に出る。カメラのレンズを物色するべく散策していると、すっかり用済みになってしまったバスターミナルがそこにある。看板がすっかり撤去されてしまってがらんとしたターミナルに、何のために配置されているのか係員だけがポツンと立っている。

 17時過ぎ、思い出横丁「T」へ。今日はマスター不在だ。ゴールデンウィークなので店を閉めるつもりだったが、スタッフの女性が「それなら私が」と言って営業することになったと聞いていたので、顔を出す。彼女は外国人留学生だが、よく働いている。

 いつものようにホッピーを注文して飲み始める。すると、スタッフの女性が僕の隣にいる初老の男性に「すみません、お一人様につきお料理一品お願いしてマス」と声をかける。男性は急に声を荒げて「だから、待ち合わせだっていってるだろ!」と怒鳴りつけた。何を偉そうに怒鳴ってんだこの野郎と、ずっとその男性を睨みつけながら酒を飲んだ。

 ホッピーを2セット飲んだところで店を出る。『あっこのはなし』の打ち上げが始まるまであと1時間半だ。このペースで飲んでいるとまた記憶をなくしてしまう――三作同時上演が始まってからというもの、記憶を保てた夜は一晩たりともない――ので、「らんぶる」に入ってチビチビとコーヒーを啜る。21時、過ぎ、「銅羅」に行ってみるとすでに打ち上げが始まっているところだ。覚えていることといえば、店員さんが通りかかるたびにハイボールをおかわりし続けたことくらいだ。