5月2日

 7時過ぎに目を覚ます。早い時間のほうが空いているだろうと、7時半にジョギングに出る。いつもより走っている人をたくさん見かけた。マスクをしていない人や、あるいはマスクやバンダナをずらして走っている人ほど、息を大きく吐きながら全力で駆け抜けてゆく。走っているうちに不安が増す。アパートに帰ると、手だけでなく、眼鏡も石鹸で洗っておく。「寛容」という言葉について考える。自分と近しいけれど、微妙に価値観がズレている人を許すのが「寛容」ではなく、自分とは対局の価値観も認めることが「寛容」だ。テレビが報じていた、パチンコ店に並んでいた人を思い出す。記者から「リスクは感じないですか」と問いかけられた客は、「負けることがリスクですね」「まあ、(コロナに)なったらなったで」と語っていた。「STAY HOME」と呼び掛けたところで、それは現在の生活が、社会がなんとか存続して欲しいと思っている人に日か届かない言葉だ。

 帰宅後はコーヒーを淹れて、オリーブのパンを食べる。コーヒーを飲みながら日記を書いていると、こちらは、文京区役所です、とアナウンスしながら走っている車が近づいてくる。「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不朽の外出はせず、おうちで過ごしましょう」。そんなふうにして、いくつかの呼び掛けをしながら走ってゆくのを聞き流していたら、「特にジョギングする際は、マスクやバンダナで口を覆うように」とアナウンスされ、ギョッとする。こんなふうにアナウンスしているということは、きっと区役所に苦情が殺到しているのだろう。ぼくも「どうして口元を覆わずに走るのか」と怯えているひとりではあるけれど、しかし、それは行政がとやかく言うレベルのことではないだろう。

 昼、キャベツともやし、それに豚コマ肉入りの焼きそばを作って、知人と一緒に平らげる。ゴールデンウィークだからと、ビールも1本飲んだ。午後、気合を入れて企画「R」の原稿を書く。

 15時45分頃、気分転換に少しだけ散歩に出る。駅前の「やなか珈琲」でコーヒー豆を300グラム買い求めたのち、団子坂にある居酒屋「三忠」にも立ち寄った。旬の魚が入荷すると短冊で張り出してあって、「ああ、もうそんな魚の季節か」といつも眺めながら通り過ぎてきた。ぼくの好きな日本酒もあり、刺身もたくさん並んでいて素晴らしい店なのだけれども、ついお金を使い過ぎてしまうので、そんなに頻繁には足を運んでこなかった。ここ最近はテイクアウトを始めたようで、ずっと気になっていたのだ。久しぶりに刺身が食べたい気分だったので、かわはぎの刺身を注文し、テイクアウト。セブンイレブン賀茂鶴も買っておく。

 原稿は19時過ぎになってようやく完成した。細かい推敲はあとわしにして、すぐにメールで送信する。かわはぎの刺身と、一緒に買ってきた蛸コロッケで晩酌を始める。知人は大はしゃぎでかわはぎの肝を醤油に溶いている。今日はもう、何も観たい番組が見当たらなかった。Amazonプライムビデオを漁り、『レザボア・ドッグス』を観る。途中で再生を一時停止して、段ボールを開け、プロ野球チップスを取り出す。24袋入りの箱に手を出してしまった。箱には大きく「プロ野球チップス」と書かれており、「そんなもん注文せんときよ、配達員も『何運ばされてるんだろう』って思うやろ」と知人に窘められていた。今日は松山竜平と中村奨吾。早くもダブりが出てしまった。『レザボア・ドッグス』を観終わり、続けて『あぶない刑事』を再生しようとしたところで、知人が見たことある、この浅野温子が毎回云々というので、見たことあるならいいわと再生を止めて、ふて寝。