1月22日

 7時半に目を覚ます。今日は肌寒く感じるけれど、どうにかスイッチを入れてストレッチをして、8時半頃ジョギングに出る。S坂上に差し掛かったところで、後ろ向きでウォーキングするお年寄りを見かけた。走り始めてみると、天気も良くて心地が良い。わりと疲れを感じず走れるようになってきた。不忍池をぐるりとまわる。朝からほとりを散策している人をあちこちで見かける。男女二人組とすれ違うと、女性はマスクをしていて、男性はマスクをあごにずらしている、という二人組をよく見かける気がする。自分が目にした数組だけの話で、一般論として語るにはあまりにも少ない例だとわかっているけれど、不思議だなと思いながらすれ違う。弁天堂の参道では屋台が組まれているところで、唐揚げや焼きそばに混じって「上野おみやげ おいしいカステラ 上野のパンダちゃん焼」というのが出ている。

 家に帰ってみると、知人は支度を始めている。今日から1泊2日の旅程で仙台までライブを観にいくというので、コロナに気ぃつけえよ、外着のままベッドに横にならんのんで、とあれこれ言ってしまう。ジャニーズのライブなので、観客はきっちりマナーを守って過ごすのだろうけれど、新幹線が心配だ。あれこれ言っていると、「過激派!」と知人が言う。知人を見送ったあと、キャベツと鰹の塩辛のパスタを作って平らげる。午後は18日に収録した鼎談の構成を進める。15時前の『TBS NEWS』で、昨日午後9時の人出は、先週末に比べて銀座で37.4%減、新橋で23.4減、歌舞伎町で16.9%減、渋谷センター街で16.4%減と出ている。「感染拡大とマンボウ適用で人出が減っている」という報道なのかもしれないけれど、この数字を見てもあまり「減っている」という印象は受けないし、実際昨晩の風景を思い返してみると、減っているという感じがしなかった。そのままテレビをつけっぱなしにしていると、ジュエリーを紹介する番組が流れていた16時45分にニュース速報の音が鳴り、「初の1万人超」と表示される。

 17時過ぎ、「やなか珈琲」に注文しておいた豆を買ったあと、千代田線に乗る。液晶モニターに流れるニュースにも、今日の新規感染者数が報じられている。どういうわけだか仲見世通りの写真が掲載されている。17時55分に新宿三丁目に到着してみると、「F」にはまだ看板が出ておらず、あたりをぶらっとする。思ったほど閑散とはしていなかった。18時に「F」へと階段を降りて、まずはビールを注文する。ビールを飲み始めたところで、すぐにひとり、またひとりとお客さんがやってきて、いわしの天ぷら、いわしの刺身と注文が入っている。料理をする様子を眺めながらビールを飲み干すと、焼酎の水割りを作ってもらう。コロナ禍の影響で、2軒目としてではなく1軒目として来店するお客さんが増えたということなのか、料理の注文が以前より入るようになっている。

 お客さんたちはマスクを外して過ごしている。ひとりだけ、マスクを外しては飲み、外しては飲みと繰り返す。ここはお店の方がマスクをつけているとはいえ、明らかに浮いているような気がする。でも、たとえば沖縄まで出かけて取材させてもらう相手や、明日取材する予定の公演関係者が、僕がノーマスクで酒場に繰り出しているのを見たら、「ちょっと、こっちにきてほしくないな」と思うだろうなと思う。そのまなざしが自分の中にある以上、酒場に行くのを避けるか、あるいはにぎわい始める前にさっと出かけて、マスクをつけて過ごす以外にやりようがない。しらすおろしの注文が2個入り、お店の方が10分以上大根をおろし続けていた。それを器に入れて、しらすをのっけてお客さんのところに運ぼうとしたところで、もうひとりのお店の方が「緑を散らしてあげたら?」と言う。ああ、そういう出し方もあるのかと、店員さんは冷蔵庫からタッパーを取り出す。その中にはきれいに切られた青ネギがびっしり入っていた。

 小一時間で店を出て、副都心線雑司ヶ谷に出る。閉店時間の迫る「古書往来座」を覗くと、帳場にはNさんが立っている。ほどなくしてムトーさんもやってきて、奥からセトさんも顔を覗かせる。閉店時間になったところで、缶ビールをいただき、飲む。こないだのトーク、面白かったと、ムトーさんとセトさんが言ってくれて嬉しくなる。それはきっと、単純に場数を踏んだ、ということだろう。別に「トークイベントに慣れて、しゃべりが達者になった」ということではなく、誰かにインタビューする経験をここ15年重ねた結果として、「これを聞きたい」「こういう話になるんじゃないか」と事前に用意したことをすべて出そうとするんじゃなくて、相手の様子を見ながら出し引きしているからだと思う、とふたりに伝える。

 ああそれ、こないだナイツの塙が同じようなことをYouTubeで、とセトさんが言う。その動画をちょうど観たところだったので、「ああ、観ました!」と話が繋がる。その動画を観たときは、自分の仕事とはまったく繋げて考えていなかったなと思う。ビールを飲んだあと、上等な日本酒をお裾分けでいただいたのだけれども、プラカップに注いでもらうと黄色がかっている。「あれ、その日本酒、大丈夫?」と言われて一口飲んでみても、自分の味覚では何も判断がつかなかった。新しいビールを飲むたび、セトさんが除菌している。僕も基本的に除菌してから缶を開けるのだけれど、セトさんの所作が妙に自然で、あんなふうにありたいものだと思う。