12月15日

 朝からRK新報の原稿を練る。どうにも書きあぐねている。17時50分にアパートを出る。今日は委員会の納会だ。ひとりずつ挨拶することになっているので、ずーんとした気持ちになりつつ大手町にたどり着く。ひとりずつ前に出て話すというので、気が気ではなかった。自分は普段、誰かに話を聞かせてもらう仕事をしているけれど、こんなふうに「自分の話をしろ」と言われると途端に困ってしまうこと。これまで雑誌に寄稿してきた原稿と違って、新聞書評は親からも感想のメールが届くこと。先日は「ブックオフがどういう場所なのかよくわかってないから、本を読んで勉強せんといけんねえ」とメールに書かれていたこと。うちの両親は滅多に本を読まず、ブックオフの存在もあまりわかっていないけれど、父は新聞を隅から隅まで読んでいて、そういう人にも読まれることを意識する珍しい場所であること。僕自身も実家にいたころはほとんど読書の習慣はなくて、活字の楽しみを教えてくれたのは坪内さんであったけれど、その坪内さんが今年亡くなってしまったこと。最初の書評が掲載された数日後に、坪内さんからメールが届き、それが最後のやりとりになったこと。本人はいなくなっても、そのおそろしい目は残り続けていること。スピーチで3分くらいのあいだに話す。話が終わると、32階で食事となる。衝立に仕切られた空間での食事。話してみたかった人たちと、話すことができなかった。まず、話をしてみたいと思っても、自分からその誰かの隣に座るのが無理で、端っこのさらに端っこに座ってしまう。今日も東京タワーが見えている。1時間ほどで散開となり、バーに移動する。その場に「居合わせた」人たちと過ごす。マスクを外して過ごしている人が大半で、感じが悪いと思われそうだなと感じながらも、ぼくはお酒を飲む瞬間以外はマスクをつけたまま過ごしていた。いつかしっかり話をしたいと思っていたSさんと、最後の最後に話すことができて嬉しかった。アパートにたどり着くころには、深夜2時をまわっている。