3月18日
5時半に目を覚ます。6時に洗濯機をまわし、コーヒーを淹れ、たまごかけごはんを平らげる。10時に品川駅に集合。全員揃ったところで10時10分、第一京浜を歩き出す。スケジュールを組んだとき、念の為にと10時集合/10時15分出発としておいてよかった。高輪ゲートウェイ駅前は、まだほとんど空き地のままだ。泉岳寺のあたりも再開発が始まるのか、「まちづくりを進めています」という張り紙がちょうど貼られているところだ。増上寺の境内には袴姿の女性たちがいて、卒業証書と記念写真を撮っている。新橋に出て、「檸檬屋」で広島風お好み焼きを6個テイクアウトし、駅近くの公園に移動する。その合間にぼくはアサヒスーパードライを2本買っておき、皆が半分ずつ紙皿に取り分けて、ちょうど腰くらいの高さにある段差に腰掛けて食べている様子を眺めながら、ビールを飲んだ。たぶんこの皆と広島に行く機会はないだろう。F.TさんやA.Iさんと行く機会も、ないかもしれない。だから、こうして皆が広島風お好み焼きを食べているというのがとても不思議な風景であるのと同時に、感慨深く、対岸からしばらく眺めていた。
それにしても、1年前とはなんて雰囲気が違うのだろう。4月に歩いたときとはまるで街の雰囲気が違っている。何も変わっていないどころか、むしろ状況は悪化しているとすら言えるのに。ちょうどお昼どきということもあり、公園にはサラリーマンがたくさん溢れていて、何か食べたり、ぼんやり休んだりしている。同じルートを歩いていて面白いのは、かつて歩いたときに目にした風景だけではなく、「ちょうどこのあたりを歩いてたときに、こんなこと話しましたよね」という会話も含めて甦ってくるということ。去年の春に赤レンガ通りを歩いていたときは、これから飲食店ってどうなってしまうんだろうかと話していた。どんどん飲食店が閉店してしまって、そうすると家賃も下げざるを得なくなって、そこからまた新しいものが生まれてくるのかもしれない、と。空き物件は街に増えているけれど、家賃の相場は変わっているのだろうか。
都営浅草線で東日本橋に出て、柳橋をちらっと見て両国橋を渡り、回向院と東京都復興記念館をめぐる。コンビニでアサヒスーパードライ(今度はロング缶)を2本買い、隅田川沿いを歩く。今戸橋跡にたどり着くと、この近くに船着場があったこと、ここから吉原に向かって川が流れていたことを説明してから暗渠の上を歩き出すと、後ろから「ブラタモリみたいだね」という声が聴こえてくる。思わずFさんに「そういうこと言われるに決まってるから、こういう説明ってしたくないんですよね」と漏らすと、Fさんが後ろの皆に「ブラタモリみたいっていうのが一番言われたくないみたいだけど」と伝える。品川からのコースを歩き始めた時点で薄々感じていたことではあるけれど、ほとんどの皆は、ここまで綴ってきたテキストのこと、読んでいないのだろう。そのことに特に傷つくこともないけれど、ざらざらした感触は残る。
三ノ輪まで歩いてお開きとなる。誰か居残る人がいれば路上で缶ビールでもと思っていたけれど、皆地下鉄で帰ってしまったので、ひとりで商店街をぶらつく。餃子でも買って帰ろうか、いやでもバスで帰るなら匂いが車内に充満してしまうかと思ってやめにする。薬局でトイレットペーパーとティッシュを買い、バス停に向かおうとしていると、自転車で通りかかったZ先輩と遭遇する。こんなふうに偶然出会えて嬉しくなる。少し立ち話。バス停にたどり着いてみると、ちょうどバスが出てしまったところだ。足が棒のようになっているので、タクシーを拾えないかとうろうろしてみたけれどまったく通り掛からず、結局次のバスで帰途につく。今日は17キロくらい歩いて、ただビールを飲みながら歩いただけなのだけれども、芯からくたびれてしまった感じがして、何も仕事に手をつけられないまま床につく。