11月1日

 6時過ぎに目を覚ます。7時になったあたりで、少し近所を散策してみる。金毘羅山には、小さい頃だったか、父の取材に同行したときかなにかに一度訪れたことがあるような気がするのだけれども、そのあたりは記憶が曖昧だ。あたりを歩いていると、これまでこういう観光地のこと、どこかで斜めに見ていたような気がしてくる。知らない土地に出かけたときにも、バスに乗った観光客が連れ立って巡るような場所には訪れず、渋い場所や、もっと生活に近い場所ばかり巡ってきたような気がする。でも、そうした観光客がまなざしてきた風景と、いちどしっかり向き合ってみても面白いかもしれないなと思う。それに、そうした観光地にも生活がある。金比羅山へと続く石段の手前に、たくさん杖が置かれていて、使う人は100円をと札が立てられている。こうして杖を用意することで生計を立てている人がいて、その人から見たこんぴらさんの風景だってある。

 石段は登らずに引き返し、ふと宿の浴場を覗いてみる。今日は月曜だから、宿泊客はそんなに多くないのではと思ってみたら、浴場の入り口には雪駄が一足もなかったので、いそいそと部屋からタオルを持って一風呂浴びに行く。風呂桶の置かれ方からして、まだ誰も入っていないようだ。体を洗って、湯につかり、ぼんやり過ごす。こぢんまりした浴場で、3人浸かると密になりそうなサイズだ。ここには誰もいないのに、少し緊張したまましばらくつかっていた。

 8時に宿をチェックアウト。入湯税を2泊分取られたので、入っておいてよかったなと思う。車を走らせ、高松空港へ。給油してレンタカーを返却。うどん屋はやはり開いておらず、ファミリーマートでハムサンドを買って、人があまりいない場所で頬張り、飛行機に搭乗する。往路と違って、そこそこ空いている。12時過ぎには日暮里まで帰ってきて、セブンイレブンのタンメンでお昼ごはん。麺類の中でタンメンだけやけにカロリーが低いのはどういうわけだろう。すぐに洗濯機をまわして、干しておく。さあ仕事をしなければと思うのだが、移動で疲れが溜まっているのか、横になって毛布をかぶると起きられなくなる。日が暮れたあたりにようやく起き出して、テープ起こしをしているうちに知人が帰ってくる。2泊空けていただけなのに嬉しそうだ。