1月24日

 8時過ぎに目を覚ます。「末廣製菓」で買った鏡餅は、ダイニングに飾ってある。この鏡餅を買うとき、「沖縄は湿度が高いですから、内地のように何日も飾れないんです」とお店の方が教えてくれていた。「ですから、2日くらい飾ったら下げてもらって、冷凍庫で保存するか、早めに食べてもらうようにと、鏡餅を買われるお客さんにはお伝えしてます」と。沖縄だとぜんざいにするという話も聞いたけれど、あずきがないので、知人にお雑煮を作ってもらう。専門店の餅を食べるのは久しぶりだが、びっくりするほどうまかった。

 今年の春に出す本について、タイトルに関するやりとりを朝からもう一往復。現状のタイトル案がよいなと思った理由のひとつには、この3年間の日々の中で胸を打たれた曲がカネコアヤノの「閃きは彼方」だということもある。あれは大阪の野外音楽堂だったか、初めてその曲を聴いたとき、これはまぎれもなく今のわたしたちの暮らしを歌ったものだと、強い感銘を受けた。特に冒頭にある「やりなおせるよ/元通りじゃない」という言葉に。現状のタイトル案は、そこで感銘を受けたこととも地続きであるように感じられるので、その歌のミュージックビデオのURLも送っておく。

 昼はラ王の最後の一袋で済ませて、午後は舞台のドキュメントに向けたテープ起こしを進める。テレビでは福岡が雪で真っ白になった様子が映し出されている。福岡でも雪が降るのか。東京のアナウンサーやレポーターが、わざわざ雪が積もりそうなところまで出かけて中継をしている。北海道の陸別町の様子も紹介され、今はこんなに気温が下がっていると紹介されている。どうやら「日本一気温が低い町」らしく、地元の人たちは「こうやって気温が下がると陸別が紹介され、観光資源になる」と笑顔で答えている。そういう「観光」もあるのか。

 16時過ぎに家を出て、新宿を目指す。今日は知人が仕事で遅くなると言っていたし、こんなに「最強寒波」と報じられると、その日の街の姿を見ておきたいという気持ちに駆られる。17時過ぎに思い出横丁「T」に行ってみると、まだ開店準備をしているところだ。数分だけあたりをぶらついて時間を潰して、お店に戻る。開店中は扉を取り払って営業してるけれど、「今日は寒過ぎるから、これで行こうと思って」と、ガラス戸をはめたままオープンとなる。こんな寒い日でも、海外からの観光客がスマホを翳しながら通り過ぎていく。別に「来週は寒そうだから、旅行の日程をずらそう」と考える旅行客はいないだろうから、寒い日に観光客がいても当たり前ではあるのだけれど、大寒波がやってきていることを皆把握しているのだろうか。「東京の冬はこんなに寒いんだ」と思っていないだろうか。

 瓶ビールを飲んだあと、ホッピーセットを追加して、かきみそバター焼を注文する。ほどなくしてお客さんがひとり、またひとりと増え、3人目のお客さんがやってきたあたりで会計をお願いする。持参した9枚のCDの買取をお願いしようと「ディスクユニオン」に立ち寄ると、カネコアヤノのニューアルバムが店内に流れている。頭からちゃんと聴きたいので、耳から入ってくる音を意識の端っこに追いやりながら、買取のお願いをする。

 カネコアヤノの『タオルケットは穏やかな』と、新譜の棚にあったよしだたくろう『今はまだ人生を語らず』を買い、新宿3丁目「F」へ。ちょうどボトルが空になりかけていて、「どうする? 追加する?」と聞かれ、財布を確認すると残り2000円しかなく、「あとでお金を下ろしにいってもいいですか?」と確認してからボトルを追加する。ディスクユニオンが閉店する前に、買取の結果を聴きにいくと、5000円近い金額だった。これならお金を下さなくても支払いできそうだと胸を撫で下ろしつつ、「F」に引き返す。街を行き交う人はほとんどおらず、落ち葉がぐるぐる舞っていた。