10月17日
6時過ぎに目を覚まし、いつもの倍近くかけてストレッチをする。風がかなり強く吹いている。7時過ぎ、コンビニまで買い物に出る。ホットコーヒーと、今日は沖縄そばの日ということで名護の沖縄そば屋さんの記事が1面に掲載されていたので、琉球新報とを買い求める。台風みたいな風が吹いていて、新聞が吹き飛ばされそうになる。宿でRK新報の原稿を書き始めると、ここ数日ずっと頭の片隅で考えていたこともあって、2000字を1時間半ほどでおおむね書き終わる。
10時に宿をチェックアウト。もとぶ文化交流センターの前にはパイプ椅子が並べられており、おそらくワクチンを接種する人たちがそこで待機している。ぼくは2階に上がり、図書館を眺める。前は隣に建物があったが、そこは解体され、現在の新しい施設の中に移転している。『群像』が並んでいる気配はなかったが、それはそうかとも思う。
隣にある博物館では友利哲夫写真展が開催されているので、見学。その中に、円錐カルストの「デーサンダームイ」からの眺めと説明がある写真があり、瀬底島と水納島が写っている。あんなふうに見晴らせる風景があったのか。学芸員の方に尋ねると、途中まで車で行って、しばらく遊歩道を進めばそこまでたどり着けるのだという。そこまでのルートを教えてもらったあと、前に来館したときに水納島の貝塚について資料を見せてもらったお礼を伝え、来年に講談社から水納島について本を出すことになりましたと伝える。
教えてもらったルートを頭の中で反復しながら、車を走らせつつ、学芸員の方に余計なことを話してしまったなと後悔する。たまたま島と出会って、たまたま耳にした言葉をきっかけに、たった数ヶ月自己流で調べて原稿を書いて――それを得意げに、地域に腰を据えて活動されている学芸員の方に、よく言えたものだなと反省する。車を駐車場に留めると、軽いピックニックぐらいの感じがする遊歩道が見えた。これなら簡単にたどり着けそうだと、ハーフパンツにTシャツ、ビーチサンダルという出立ちで歩き出す。
遊歩道を進むと、警報音のような虫の鳴き声が響いている。蝉だろうか。一体どんな姿をしているんだろうかと樹々を眺めても、その姿を見つけることはできなかった。5分ほど歩くと、遊歩道から外れる方向に矢印があり、「デーサンダームイ」とある。こ、ここを進むのか。ヘビとかは大丈夫だろうかと、おそるおそる獣道を歩き出す。最後の数十メートルは、なかなかの急斜面を進む。円錐カルストという名前の通り、石灰岩が円錐状に切り立った形状になっている。ここで足を踏み外しても、誰にも気づかれないまま死んでいくだけだなと不安になりつつ、どうにか頂上にたどり着くと、きれいに風景が一望できた。
しばらく風景を眺めて、あれ、どっちから登ってきたっけと一瞬道を失いつつ、下りだす。登るよりも下るほうが大変だなと思いつつも、どうにか駐車場まで引き返す。そこそこ汗をかいたのと、途中で蜘蛛の巣に頭を突っ込んだのとで、手洗い場で頭から水をかぶって洗う。それなりに体を動かしたせいかお腹が減り、「ドライブインレストランハワイ」まで車を走らせ、特製カレーライスを平らげる。まだ11時過ぎだったけど、それなりに店内は賑わっていた。5分で食事を終えて、本部町営市場に行ってみるとコーヒー屋さんは定休日だったので、コンビニでアイスコーヒーを買って那覇方面に引き返す。西原インターを出て、上原という住所のあたりを走る。今朝書いた原稿の中に、このあたりにあるモスクの話題が出てきたので、車に乗ったまま眺める。普通のアパートのようだけれど、そこに看板が出ていた。
14時半、ホテルに荷物を預け、給油した上で久茂地にレンタカーを返却。タクシーでのうれんプラザに移動(ぎりぎりワンメーターを超える)。休日でも(いや休日だからか)少し賑わいもあり、「MRYSそば」は混雑していたので、ぐるっと一周してのうれんプラザをあとにする。今朝書き上げたばかりの原稿を、お店の方に届けたのち、「パーラー小やじ」へ。今日は休日だから、15時前からもう営業している。とりあえず生ビールを頼んでメニューを見ると、愛媛県産のかつお刺し(700円)がある。本部で食べそびれていたので、迷わず注文。一切れ頬張ってみると大変美味しく、ひやおろし(今日は日高見が入荷していた)も頼んだ。お店の方が仕事の手を止めて、「ひやおろしにかつお、いいっすね」とつぶやく。
日本酒を2杯飲んだところで、少し混んできたこともあり、切り上げる。まだ16時だけどほろ酔いだ。こんな時間からお酒飲んで、書かなきゃいけない原稿もあるのに何やってるんだという気持ちにも少しだけなる。今回行っておきたかった酒場は他にも数軒あるけど、営業再開していなくて、同じ店で何回も飲んでいる。「そんなふうに同じ店に毎日行って、何か違いはあるのか?」と、自分から浮かんできたのが信じられない言葉で自問自答する。そんな言葉が浮かんでくるのは、しばらく外で飲む日々から遠ざかっていたせいだろう。
しばらくごろごろして酔いを覚まして、少し原稿を考えたのち、19時過ぎにホテルを出る。栄町まで歩き、「東大」の前を通りかかると、10月一杯は休むと貼り紙が出ている(少し前にネットで発信されていた情報だと「19日から営業再開」とあった)。日曜日だから、数日前より閉まっている店が多いけれど、営業しているお店はどこも賑やかだ。「うりずん」はカウンターがわりと埋まっているようだったので、隣の酒屋で缶ビールを買って、330号線沿いで飲みながら書評を練る。20分近くかけてゆっくり飲み干しても、カウンターに空席が出る気配はなかった。あのカウンターで原稿を練りたかったなあと思いつつ、ビールをもう1本買ってゴン太を眺め、帰途につく。